このページの本文へ移動

平成26年度 第5回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成26年11月17日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成27(2015)年1月9日

資料

主な意見の概要

【適切なマンション再生手法の選択等のための支援について】

○ 再生手法の選択は、区分所有者の意思決定によるべきである。必ず修繕が先で、建替えや売却はその後というような順番付けをするのではなく、区分所有者がどれを選んでも円滑に進められるような仕組みづくりが重要である。

○ 建物の寿命はハードの問題だけではなく、居住者によっても決まる。改修か建替えか検討する際には、居住者にとって何が大事かを考えることが重要である。たとえ建物の耐震性に問題があっても居住者が快適だと感じているのであれば、まずは改修から始めるなど進むべき順番があるのではないか。

○ 再生の手法は、基本的には居住者が決めるべきである。一定の年数が経ち、建替えたいと思った時にそれを可能とする支援が必要である。日頃から管理組合内の情報共有ができていないと、問題認識が遅れ手遅れとなる。管理組合の中に一定の専門家が入り、区分所有者がマンションの現状や課題を認識できるよう支援することが重要である。

○ 改修か建替えかを検討する際、専門家による支援は不可欠であるが、最終的に事業が成功するか否かが見通せない段階であっても、管理組合内部に専門家への費用を支出する仕組みがないと検討が円滑に進まない。

○ 標準管理規約の改正で、建替えに係る計画検討のための費用について、新たに支出項目が付け加えられた経緯がある。費用の支出については管理組合の中でコンセンサスを得た上で管理規約に基づいて専門家と契約し、検討を進めるのが一般的である。

○ コンサルタント等に相談する段階では具体的に建替えを視野に入れた検討が進んでおり、ある程度の費用支出について管理組合内部でコンセンサスが取れていることが多い。マンションの戸数規模にかかわらず、専門家に要する費用はほぼ一定である。小規模なマンションだと修繕積立金の額にも限界があることから、費用支出について管理組合内部でコンセンサスを取るのが難しい場合もある。

○ 専門家による建替えや改修に関する相談対応は一回限りで終了するものではなく、管理組合の理解度や検討状況に応じて継続的に行うものである。都が既に実施しているマンション管理アドバイザー制度等は初動段階の相談には有効であるが、これに加え、継続的に相談対応を行う制度についても検討する必要があるのではないか。

○ 区分所有者が再生手法を合理的に判断し選択できるよう、マンションの物理的な耐用年数や、適切な修繕を行った場合の寿命などについて、マンションの供給をする事業者等から、きちんと説明がなされるべきである。

○ 再生手法の選択ということと市場での流通については、分けて考えなければならない。マンションの耐震化は必須であるが、耐震化されたら市場性が上がるというわけではなく、マンションの市場価値は、あくまでも立地等の利用価値や購入者側の予算で決まる。

○ 国の修繕積立金ガイドライン通りに積み立てていても、修繕は可能だが改良工事までは賄えないのではないか。時代の変化に対応しつつ建物を維持していくのであれば、おのずと修繕積立金の額も高くなる。新築入居時に、改良まで視野に入れた積立金の額についても把握しておいてもらわないと、修繕もおぼつかなくなるのではないか。

○ 国の長期修繕計画ガイドラインの中で、修繕積立金の積立方式は均等積立方式が標準とされた。一方、従前より新築分譲時においては、購入者の初期負担を考慮し、当初の積立額を抑え段階的に積立額を値上げする方式(段階増額積立方式)が多く採用されてきたが、均等積立が望ましいとするガイドラインの公表により、変化の兆候は垣間見えるのかどうか。

○ 修繕が行われない分譲初期段階では区分所有者の負担が重くなるため、均等積立方式を採用しているマンションは少ないのではないか。

○ 建替え後のマンションの修繕積立金設定をどうするかという議論もある。必要に応じた追加徴収又は増額は簡単ではないため、当初から多少厳しくとも均等に積み立てた方が良い。ただし、建替え後は高齢化した居住者も多いため、経済的な負担を勘案し、修繕積立金が抑えられることもある。

○ 修繕積立金はあくまで通常管理のために使うものである。改良工事や一括売却、建替え等に係る費用については積み立てていないのが当たり前である。再生に係る費用をどこから捻出すべきか、再生のための積立金を設けるなど、通常管理のための修繕積立金とは別に考えていかなければならない。

○ 修繕積立金は、建物価格や管理費、ローンなど総合的に勘案し決められるものである。最低20年間は大規模修繕工事が可能となるよう積算しているとは思うが、実際に必要なものを全て積み立てていくとすると現実的に厳しい金額となってしまう。購入後、当初の10年間は積立金を毎年値上げする旨を規約で定めているマンションもある。

○ 購入者によっては、共用部分がきちんと修繕されていれば、ロビーやオートロックなどの設備がなくともよいという人もいる。近年ではリノベーション技術も発達し費用も安くなっている。マンションを改修することでマンションの価格が上がるよりは、通常の修繕のままで安く購入し、専有部分を自由にリノベーションしたいという要望も高い。

○ 老朽化したマンションについても、改良工事を行う必要があるが、立地等によっては改良せずに未だに流通しているものもある。中古物件を2,000万円程度で取得し、共用部分の玄関とサッシュ以外をリノベーションして新築に近い状態で居住するという需要もある。例えば50年以上など、長期間にわたり建物の維持が良好になされているマンションの改良工事等に対し補助を行ってはどうか。

【マンションの建替え等に向けた支援について】

○ 30年を超えたから建替えということではなく、建物自身はきちんと改修していけば長く持つ。一方、再開発やまちづくりという観点から見れば築年数に関わらず建替えを視野に入れなければならない場合もある。

○ 建替え決議の決議要件を緩和しても、かえって区分所有者同士のせめぎ合いが増えるのではないか。単に決議要件の緩和をするのではなく、もう少し柔軟に対応できるような別の方法を検討すべきではないか。

○ 年月の経過とともにマンションの賃貸化率が上がると、居住していない区分所有者や賃借人との意見調整が必要となり、建替えに向けた合意形成が難しくなる。借地借家法の見直しを含め、定期借家をいかに使いやすくするかという観点からも検討する必要があるのではないか。

○ 都市計画法で定める「一団地の住宅施設」は、地区計画へ移行することで廃止することができる。建築基準法で定める「一団地認定」の取消しについては、個人の財産に関わることから多数決による取消しを認めないというのが国の見解であるが、要望も多いことから、今後検討する必要があるのではないか。

○ UR所有のある団地で耐震工事を断念し除却・売却処分を検討したところ、部分的な売却はまちづくりの観点から問題があるため、地元自治体から都市計画法上の一団地認定を外すことも含めた全体の再生計画の作成を求められたとのことである。