このページの本文へ移動

平成26年度 第3回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成26年10月6日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成26(2014)年11月25日

資料

主な意見の概要

【マンション管理の適正化に向けた施策の基本的な考え方について】

○ マンションは戸建住宅に比べて固定資産税を3割程度多く負担していると言われている。道路や下水道等の整備費は戸当たりで見れば、戸建住宅の方が多くかかるほか、小規模宅地の固定資産税については、1/6まで軽減される効果もあり、受益負担率はマンションが戸建に対し2倍多いという試算がある。税制の改正は国の政策であり難しいが、戸建てではなくマンションに対して行政が支援することには税制面からも合理的な理由がある。

○ 施策の基本的な考え方の中に、管理業者の立場も位置づけるべき。管理組合が管理するといっても実際はほとんど管理業者が請け負っており、非常に重要な存在である。今現在は管理業にすぎないが、第三者管理者方式の整備が進めば、管理業から管理者業へという可能性も出てくるし、その先にはマンション管理信託という話もある。

○ 東京都と基礎的自治体との役割分担について、場合によっては東京都から積極的に働きかけをしていかないと、人員的な問題等で自治体ごとに対応が異なるなどの理由から、マンション管理適正化のための仕組みがうまく機能しなくなる恐れがある。

【管理状況の把握について】

○ アンケート等で管理情報を求めても、管理会社は管理組合から許可を得なければ提出することができないため、回収率は落ちる。条例等で管理情報の登録が義務化されれば、管理会社は提出しやすくなる。

○ 管理情報登録の内容が重要である。詳細なものだと出しにくくなるため、簡単な内容でもよい。マンション政策にとって基本情報となるマンションの棟数でさえ、統計がなく把握は困難な状況である。管理情報の登録により基本情報を把握することは、政策実施のために必要である。

○ マンションストック数を考えると、今後膨大なマンションの再生が必要となる。再生を進めていくためには、最終的には管理組合あるいは区分所有者が自助的に動くよう誘導していく必要がある。合意形成は非常に困難であるため、早い段階から仕組みを稼働させ、区分所有者が自己のマンションの管理の状況について客観的に把握できる状況を作り、少しでも改善できるようなインセンティブを与えていかなければならない。条例等に基づく義務付けにも課題はあるが、緩やかな形からでも実施すべき。一定の情報を把握し、それに基づいて行政が何らかの形で積極的に関与し動きを作っていくことが重要である。

○ 私的財産たるマンションは原則自由に取得・管理・処分できるものであり、管理情報の報告を義務付けるには相当合理的な理由が必要である。管理不全マンションが都内で著しく増加するなどの状況があれば別だが、現状では時期尚早ではないか。豊島区の取組状況を踏まえてからでも遅くはないのではないか。

○ マンションの管理情報については、管理組合がコントロール権を持っている。出し手である管理組合側の意見をよく聞くべきである。

○ ある管理組合団体で所属するマンションの管理情報について整理を行ったが、確認できたのは3割程度と聞いている。管理組合の役員は、日常の忙しさの合間を縫ってボランティアでやっているという意識があり、新たな負担は避けたいと思っている。登録を義務付けるにしても何かしらのインセンティブがないと進まないのではないか。

○ 国交省主導の「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」が、東日本不動産流通機構(REINS)(以下「REINS」という。)や横浜市と協同して進められている。売買事例、マンションの基本情報、行政インフラサービス等詳細な情報が一元化される。一つのモデルとなりうるものであり、非常に参考になるものと思われる。

○ 行政に管理状況を報告することと、登録情報を公開することは、分けて議論すべきである。報告の義務付けは、マンション施策の基礎となるデータ収集のために有効である。一方、登録情報の公開については、個人情報の公開にもあたるので慎重に検討すべきである。

○ 登録情報は私的な情報であるため、情報公開の際の取扱いについては慎重に対応すべきである。

○ 登録情報を整理し活用する際は、みらいネットやいえかるてなどの既存のシステムと重複しないよう留意する必要がある。また、管理組合に管理情報の提供を義務付ける際には、管理業界との調整が必要である。これを機とした管理会社の変更が頻発することのないよう配慮すべきである。

【管理組合に対する支援について】

○ 管理組合が機能していない場合、区分所有者が知らないままに管理不全の状況が進行し、資産価値が低下することにもなりかねない。区分所有者が自己のマンションの状況やデータを認識した上で、組合員の側からも管理組合に対し適正な行動を促せるような情報提供の仕組みが必要である。

○ 管理組合が日常的に行政と触れる接点をある程度作っておくことが必要である。建替えの段階になっても、基礎的自治体との接点を持っていない管理組合が多い。日常的に行政に相談・情報提供していれば様々な問題も円滑に進むのではないか。

○ 管理業務の監査を実施する場合、管理組合による自己検査をどのように実施すべきか。また、マンション管理士等による監査を実施するとなると、管理会社の変更につながる恐れもあるため、状況によっては管理士と管理会社が敵対関係となってしまうことにもならないか。

○ マンションみらいネット、いえかるてが一向に広がらないのは、使い勝手の良し悪しもあるが、大手の管理会社が独自にシステムを開発・利用しているため、シフトしていかないという現状がある。今までと同じ対応では広がらないので、マンション管理業協会等と連携して今後の方法を模索するなど何らかの工夫が必要である。

○ 設計図書が保管されていない場合、その復元作業に相当の調査と費用がかかる。手取り足取り支援する必要はないが、金銭的な問題で耐震診断すら行えない組合が実際にある現状を勘案すれば、設計図書がないだけで管理状況が悪化していく危険性を回避するため、この部分について踏み込んだ支援が考えられないか。

○ 制度や施策を作っても、管理組合側に受け皿がないと効果がない。マンション管理士等がマンションに受け皿を作るところから支援は始まると思うが、さらに具体的な支援や助言の在り方についても検討すべきである。

○ 都や技術者が何らかの支援を行うにしても、その受け皿となる管理組合がきちんと組織されていなければならない。支援を受けることも契約と位置付ければ、管理組合の契約の相手方となる者の安全や便宜を考慮し、区分所有者全員の代理人に当たる者として、区分所有法上の管理者の選任が求められる。また、区分所有者全員との関係において、管理組合の執行機関に当たる理事会などの構成も求められる。必要に応じた段階を踏みながら管理組合が組織的に運営されるようになるための支援を行うことが重要である。

○ マンション管理士は国家資格者として適切な助言指導を行う法律上の責任があり、信用を失墜すれば資格のはく奪もありうる立場にある。また、マンション管理士賠償責任保険に加入し、万一の賠償責任の負担能力を備えて助言指導に当たることができる。その助言指導は、管理組合の役員が区分所有者に説明を尽くすことについて専門性を伴ったものであり、経験則のみを拠り所とした者による責任を伴わない助言指導とは区別されなければならない。

○ 施策を展開していくためには広報がまず第一歩であり大変重要である。とりわけ高齢者は、マンションの維持管理に対する関心が総じて低く、消極的であることが課題である。インターネットメディアは、自ら情報収集を行う積極的な人には便利なツールであるが、そうでない人にとっては無用の長物である。そのため、最初の広報メディアは、管理組合やそれぞれの居住者のポストに入る紙メディアとし、定期的に配布することが効果的である。母数の多い東京都では多大なコストを伴うので、例えば、地域や築年数等で対象マンションを限定するなどしてはいかがか。

○ 理事長理事会方式は既に定着していると認識しているが、新たに第三者管理者方式が加わると、管理組合側は、今までの運営方式は誤っていたのではないかと戸惑い混乱する。理事長理事会方式に代わり、管理業者やマンション管理士が管理者となり管理していくとなると、当然コストも伴うため、管理組合内で様々な問題が生じるのではないか。

○ 第三者によるマンション管理の支援については、いきなり第三者が理事長として派遣されるものもあれば、初めは理事として派遣される場合もある。管理不全の解決に向けて、管理組合はそれぞれの状況に応じた段階を踏んで進んでいくということも考慮する必要がある。

○ 第三者管理者方式は、管理会社への全面委託も第三者管理者方式に含まれるのではないかと誤解されるほどであり、まだよく理解されていない現状がある。

○ 国が検討している第三者管理者方式というのは、基本的には管理組合方式を前提として残しつつ、区分所有者以外の第三者が管理者となるというものである。本来の管理者方式は、管理組合が組織されずに管理会社等が管理者となり、区分所有者・総会・外部の管理者の3つで進めていく方式のことを言う。

○ 当事者である区分所有者が主体となって管理していくことが基本であり、それがマンション管理適正化法の趣旨であることからも、第三者管理方式は、あくまで万策尽きた際のセーフティネットのような位置づけの方式であることを明らかにする必要がある。

○ 管理不全の問題が第三者管理者方式だけで解決するわけではなく、あくまでもメニューの一つである。もちろん全てのマンションがこの方式を採用すべきということではない。

【マンションの管理と市場との関わりについて】

○ 新築分譲時に分譲事業者が管理について十分な説明を行うことは大変重要である。コストの問題もあり分譲事業者は説明を敬遠しがちであるが、そこをどうやって指導していくか検討する必要がある。また、重説時は説明事項が多くなかなか聞いてもらえない。効果を高めるために、説明の仕方や時期を考えることが必要である。今後は、分譲事業者に対する周知に限らず、購入予定者のためのガイドラインやセミナーがあってもよいのではないか。

○ 新築分譲時における管理に関する説明については、分譲事業者もしっかり説明していく必要があるが、説明の時期については全て入居説明会でというわけにもいかない。管理費等の購入の判断に関わる部分については重説時に説明する必要がある。

○ 管理情報が使われるのは売買の取引現場であり、取引のタイミングで機動的に管理情報を取り出せるかどうかが重要である。仲介業者によく利用されるREINSのデータと管理情報を連動させることができれば、仲介業者を通して売主・買主に円滑に管理情報を提供することができる。合わせて広告表示もREINSと連動できれば、売買の取引現場に情報を集中させることができる。

○ 管理情報を価格査定に反映させるまでには相当の時間がかかる。例えば、管理の状態が良いものは担保評価が上がるなど、まずは担保評価に反映できないか。

【管理不全マンション等への対応について】

○ 管理不全に既に陥っているマンションに対して様々な罰則は有効ではない。その場合は別の方法で強制的に入っていく必要がある。管理不全に陥る前の予防策としては、公表等の罰則を使いながら行政が支援し、管理の改善を行っていく必要がある。

○ 管理不全マンションに対し、指導を超えて罰則(氏名公表等)まで実施できるかどうかは、どこまで適正管理を義務付けできるかということである。適正化法第4条(管理組合・区分所有者の管理努力)を根拠として条例等で行政への報告を義務付け、罰則を進めていく前に、管理組合や区分所有者が負う適正管理の義務はどこまでなのか、法律的な議論を行っておくべきである。