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平成26年度 第1回 東京都住宅政策審議会マンション部会(平成26年8月6日)における資料及び主な意見の概要

最終更新日:平成26(2014)年9月17日

資料

主な意見の概要

〈管理組合に対する支援について〉

○ 行政による支援策の活用を検討している区分所有者がいても、それを他の区分所有者に説明し、マンション内で合意形成を図る必要がある点で、個人の判断・裁量のみで活用に漕ぎ着けることは難しい。管理組合内で合意形成を図る以前の段階から行政の支援が必要である。

○ マンションは居住環境の中の一つの住まいであるので、地域が関与していかなければならないのではないか。マンション単体がどうあるべきかということだけではなく、居住環境の中で地域と関わりを持ちながらという観点が重要だと思う。

○ マンションの再生は究極の管理である。再生ができている所は例外なく管理状況がよく、組織もしっかりしている。

○ 日常の管理の他、例えば建替え決議の瑕疵についての裁判上の争いなど、複雑で難しい問題が区分所有者に委ねられている。管理組合に対し、マンション管理士などの専門家による支援が必要である。

〈管理状況の把握について〉

○ マンションの実態がわからないと、講じるべき支援策など対応しづらい。任意のアンケートで把握しきれないとなると、例えば条例で、都の調査権限を位置づけた上で、豊島区のように届出義務を設け、情報を把握する必要があるのではないか。

〈管理不全マンションへの対応について〉

○ 管理状況が悪いマンションは周辺の市街地環境に大きな影響を与えかねないが、その中には、建替えや解消により問題が解決するものもあれば、その道すら開かれず、管理を相当一生懸命行うしかないマンションもあるので、議論の対象となるマンションをもう少し絞った方がいいのではないか。

○ 管理状況が悪いマンションがどの程度あるのか把握することは難しい。管理不全に陥る前、例えば管理規約も見直さず、修繕もきちんとしていない、修繕の仕方もわからないなどといった状況のマンションに、高齢化の波が押し寄せ、役員のなり手がいないなど、様々な問題が一度に発生しており、現場は大変である。

○ 新しいマンションについては、日常的な管理への支援だけで足りるが、築年数が経過しているマンションの場合、要再生マンション化を防止するための施策を講じるべきものと、既に要再生マンションとなり、直接再生支援を講じる必要があるものとに対象は分かれるだろう。

○ 管理不全に既に陥っているマンション、管理不全に陥りそうな予備軍のマンション、もう少し後押しすればうまく再生・耐震補強・建替えが可能なマンションなど様々な段階があることを意識して議論すべき。

○ 修繕もきちんとされており、修繕積立金もしっかり積み立てられているマンションは、日常的な管理組合の体制がきちんとできており、管理に対する意識も相当高い。一方で管理が全くされておらず管理不全に陥っているマンションがあることも事実である。そこに陥らないための東京独自の施策に取り組むべき必要があると感じている。

○ 外部不経済を起こさないためには適切な修繕等が重要となるが、そのためには日常の管理組合の体制が機能していることが重要である。

○ 管理不全に陥っているマンションに対し、どのような支援メニューを用意しても、支援を受ける側にそれを活用しようという意識がないと支援は難しい。管理組合の中には、行政が支援すると言えば、自分たちは何もしなくても支援が完結するようなイメージを持つ傾向があるが、決してそうではないことを啓発する必要がある。

〈管理情報の提供等について〉

○ 修繕積立金や管理費の額だけ公開されても、その額が適正かどうかはわからない。情報開示について、消費者が選別しやすくなる仕組みや基準が何もないのであれば、議論すべきではないか。また、管理組合の情報開示の方法や内容について誰が決めるのかなど、ルールが明確でないのならば議論すべきではないか。

○ 消費者目線に立ったわかりやすい方法で、より早い時期に情報が開示され、消費者が自分の意志で閲覧可能な仕組みについても議論すべきではないか。

○ 問題なのは、管理組合の側で情報開示の範囲を決めていないことである。市場評価にプラスとなるような情報も含めて、管理組合がマンションの実態を情報開示していかないと、宅建業者の側からすると顧客を逃すことになる。

○ 管理組合内で、どのような情報を開示対象とするかといった議論は、実質的には何もされていないだろう。管理会社に委託している場合でも、管理委託契約書に定められた範囲でしか開示されない。管理組合内での議論に委ねても、悪いことは開示しないという結論に至ると考えられる。

○ 宅建業法で重要事項説明時に、開示すべき情報の項目を増やすなど、何か別の方法を講じていかないと情報開示は進まないのではないか。

○ 管理組合は、管理情報がどのように利用されているかということにあまり関心がない。管理業者から宅建業者に対し情報が提供されても、その内容や提供先について管理組合に伝わっていない。管理情報をどのようにコントロールするか、管理組合はもう少し自主的・積極的に対応して欲しい。

○ 宅建業者には、法律に基づき重要事項説明に関連して様々な取決めがあるが、管理組合や区分所有者にはそういった義務はないので、宅建業者が情報提供を請求しても、管理組合や区分所有者が情報提供の意識を持つことは難しい。

○ 宅建業者が管理組合から情報提供を受けるのは媒介契約を結んだ後である。査定は、媒介契約を結ぶ前に行うものであり、その段階では管理組合や管理会社から情報をもらう根拠はどこにもない。情報提供については、情報を提供する側、受ける側それぞれに明確な根拠が必要である。

○ 査定に関し、比較事例となるマンションからは、パンフレットや過去の販売実績以上の情報を得ることは困難である。比較対象がないと、市場流通性等でもひとくくりで評価するというのが実態である。

○ 管理組合は、居住者の集まりであることを考えると、情報開示について消極的な部分があると思う。情報開示についての必要性や動機づけ、あるいは制度的な担保のようなものが必要になると感じる。また、管理組合と管理会社あるいは区分所有者との意思疎通も重要になってくると思う。

○ 管理組合はマイナスの情報は当然出したくないだろうが、消費者の立場からすると、ある程度マイナスの要素も含まれた情報でなければ、相互比較できる信頼ある情報とはならない。

○ 情報開示に関しては、最低限、共通の内容と評価基準を持ち、ある程度義務付け的なものがないと市場は機能しないのではないか。また、自主的な自己申告や管理会社の情報そのままということではなくて、第三者が一定期間ごとに客観的に評価した情報が開示されるような状態であれば、情報の質も確保され、市場も機能するのではないか。

○ 耐震診断の有無については「あり」「なし」と表示することで重要事項説明を終えている場合が多い。「あり」の場合、どの範囲まで説明するのかということは明確になっていない。

○ 重要事項説明については、耐震診断「あり」の場合、耐震診断書があればそれを添付する。宅建業者として診断内容の説明義務がないことから、耐震性の有無など実態はよくわからないというのが現状である。

○ 宅建業者は、基本的には耐震診断の有無を重要事項説明の際に説明しているのみ。東京都は緊急輸送道路沿道の耐震化に取り組んでいることから、都内の幹線道路沿いのマンションについては耐震診断「あり」のケースが多いと思われる。

〈市場における管理の評価について〉

○ 管理状況について情報開示を進めて、管理がしっかりしていない場合には市場で淘汰してもらう方が、コストをかけてマンションの再生や自立を支援していくよりも効率的ではないか。

○ 旧耐震基準で耐震診断も未実施のマンションは、市場で評価されないなど、より厳しい視線にさらされるべき。

○ どんな支援が必要かという議論よりも、管理不全状態に陥らせないようにするにはどうしたらいいかという議論の方が先である。これには、きちんと管理すれば市場で評価され、自分たちの資産価値を上げていくという仕組みが成り立っていることが前提となる。これをしたら必ず評価されるということがわかっていれば、区分所有者はそれを行うはずである。立地や間取りだけでなく、管理そのものがマンションの価値を決めていくという仕組みが確立しないと、管理を放置し続けるマンションが出てくるだろう。

○ 管理情報を開示することの可否は、管理組合が自主的に決めることである。開示しない組合や当事者については、非開示なりの評価を行い、開示したところについては市場で適切に評価するということが原則だと思う。

○ 管理が十分行き届いていないマンションが市場でそれなりの評価を受ける形を作っていかないと、当事者の中での動機づけも難しいのではないか。

〈売却をするつもりがないマンションの管理適正化について〉

○ 管理不全の究極の課題は、居住者が終の棲家と思ってしまえば、売る必要もないので、これ以上何もしなくてもいいという結論になり、スラム化する可能性があるということである。この点については、行政の介入が重要であるため、きちんと議論していくべきである。

○ マンションを売却する一部の居住者のメリットのために、情報開示に必要な費用を負担したくないという居住者もいる。自分たちの管理情報がしっかり開示されて評価されることが大事であると理解してもらう必要がある。

○ 管理状況が市場で評価される仕組みはもちろん大事だと思うが、所有者全員が売却する気がないというマンションもある。こうした、「誰も売らない、だから何もしない」というマンションについてどのように対応していくかということについては施策の考えどころだと思う。

~マンション部会終了後に提出された意見~

〈管理不全マンションへの対応について〉

○ 管理不全マンションの明確な基準がない。まずは判定基準について議論すべきではないか。

○ 判定基準が重要事項説明書に追加されれば、売買時の障害となるのを避けるため、管理組合は改善に向けて動くのではないか。

○ 約9割のマンションが管理会社に管理委託していることから、よほど劣悪な管理会社でなければ、管理不全マンションに陥ることは考えにくいのではないか。むしろ、自主管理や一部委託を行っているマンションの実態を把握すべきではないか。

〈管理情報の提供等について〉

○ 市場価値を高める事項の告知手段は、重要事項説明の時だけでなく、販売パンフレットやチラシ等で説明は可能である。

○ 管理組合が情報開示に消極的である理由の一つに、情報開示という行為そのものが不利益なイメージが強いことが挙げられる。