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平成23年度第4回東京都住宅政策審議会(平成24年1月27日) における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(目標1 安全で安心な住宅・住宅市街地の形成)

○ 木造住宅密集地域の解消について、区部においては、固定資産税の減免等の手法を使うこともできるが、市町村部においては、そうしたことができない。市町村部においても、木造住宅が密集した地域があるので、積極的な施策が必要である。

○ 木造住宅密集地域の整備改善に関して、不燃化の整備プログラムや特定整備路線の整備により、移転を余儀なくされる住民向けの移転先として、都営住宅等を積極的に活用することが記載されているが、そのためにも、整備地域内に都営住宅などを建設して、居住の継続を保証するべきではないか。

○ 民間建築物の耐震化について、緊急輸送道路沿道については、様々な支援策が行なわれているが、それ以外の地域の民間建築物についても耐震化を進める必要があり、それらについては、もう少し踏み込んだ施策がなければ、耐震化は進まないのではないか。

○ 2020年度に住宅の耐震化率を95%にすると政策指標が設定されている。2015年度までに90%とするためでさえ、自然更新も含めて34万戸以上の耐震改修が必要とされるのであり、2020年度までに95%とした場合には、5年間でさらに30万戸以上の耐震改修が必要という計算になる。本当に目標を実現するためには、これまで以上の取組が必要である。そうした観点から、審議会答申の中に盛り込まれていたリフォームや建替えに合わせた耐震化など、耐震化をより効果的に進めるための方策を、マスタープランにも書き込むべきである。住宅耐震化の実効性を高めるためには、耐震診断や耐震改修の助成額の引き上げ、助成対象の拡大も含めて、制度の拡充を図るべきである。

○ 都営住宅と公社住宅の耐震化率を、2020年度までに95%にするという目標値について、都営住宅や公社住宅は、東京都がその気になれば耐震化率100%にすることが可能なので、目標値は100%とすべきである。

○ 災害発生前の防災機能の水準を上げることに関して、例えば、耐震化率向上など、地震でも耐えられる建物にしていくことのほかに、災害が起きても人々の生活が持ちこたえられるための、備蓄など建物ごとに自立型にしていくような仕組みを、住宅マスタープランに盛り込んでいくべきではないか。

○ 火災、水害、液状化、津波など様々な危険度を示した総合的なマップを作成して、この地域はどういう地域なのかということを住民に対して周知することが、住宅政策上必要ではないか。

○ 現行マスタープラン(2006-2015)で政策指標として設定されている「多摩産材の住宅等への使用量」は横ばいでなかなか伸びていない。健全な森林育成、林業再生のためにも、多摩産材の住宅への利用が大きな課題となっている。例えば、都営住宅の木造化・木質化による利用推進や、民間住宅への利用の啓発促進などにも努めるべきである。

(目標2 地域における生活サービスとの連携)

○ ケア付き賃貸住宅については、所得階層に応じた重層的な対応が必要である。高額な有料老人ホームに入居できない中所得層には、ケア付き賃貸住宅も必要であるが、そこにも入居できない所得の低い方もいるので、シルバーピアなどを増やすことも検討すべきである。

○ ハードだけでなくソフト面での組み合わせとして、地域ケアネットワークなど地域での支え合いの取組が最近見られるようになっている。都としても、そうした取組にもう少し積極的に支援すべきである。特に震災後は「絆」ということが注目されたが、それを具現化するためには、介護保険制度だけでは担えない部分について、住宅政策と福祉政策がより密接に連携した施策が必要である。

○ 共助として住民組織が取り組んでいるグループリビングについては、住民組織が取り組むには多くのハードルがあるので、行政の支援が必要である。

(目標3 マンションの管理適正化・再生)

○ 「マンション施策への行政関与」という表現は、「マンション管理適正化への行政関与」などとした方が適切なのではないか。

○ 「マンション管理の適正化・再生」に関して、「マンション啓発隊」の言葉づかいについて、マンション管理組合の中にはしっかりしている管理組合もあるので、「啓発隊」ではなく、「応援隊」や「支援隊」と表現する方がよいのではないか。

○ マンション管理に関する相談体制や情報提供の充実について、答申では、建築士、弁護士と並んでマンション管理士が明記してあったが、このマスタープラン(素案)では、マンション管理士の名称が抜けている。マンション管理については、マンション管理士が専門家なので、例示に付け加えるべきではないか。

○ 「被災分譲マンションの円滑な再建等のための検討」について、「合意要件のあり方の検討」と記述されているが、例えば、3分の2、5分の4、あるいは災害時の特殊例として、何らかの規定を設けることまで踏み込もうとしているのかわからない。内容をもっと分かりやすく記述すべきではないか。

(目標8 良質な住宅を供給する市場の整備)

○ 良質な住宅の供給という観点に関連して、建設労働者の労働環境を担保する必要がある。元請けや下請けの関係の適正化や労働環境の向上も必要である。安心して働ける労働環境があって、初めて安心で良質な住宅が建築される。そういう観点から、都がしっかりと監督していくことを、マスタープランに盛り込む必要があるのではないか。

○ 空き家対策について、空き家の内容を精査する必要がある。繁華街にあるのか、郊外にあるのかという立地条件や、戸建住宅かマンションかということによっても、対策の中身が違ってくる。また、既存住宅市場で流通を活性化させることも必要であるが、空き家を高齢者や子育て世帯のための福祉施設に活用することも重要と考える。

○ 地域の防災や防犯上の問題から、老朽化して所有者の判らない空き家への対策が重要である。区市町村の中には条例を制定して対策に乗り出しているところもあり、東京都としても総合的な対策をもう少し踏みこんで考える必要があるのではないか。

(目標9 支援を必要とする世帯の居住の安定確保)

○ 都営住宅について、所得の低い方が入居することや、生活保護受給者や介護が必要な方等が入居することが多いことから、区市町村の負担も増加することとなり、自治体によっては敬遠するところもあって、区市町村間の公平性が必要であるとも言われている。例えば、介護保険制度の住所地特例制度のように、都営住宅に入居する居住者が入居以前に住んでいた区市町村が、福祉の費用を支出するなど、公平性を保つための色々な方法が考えられると思うので、そのようなことも検討する必要があるのではないか。

○ 都営住宅への入居希望者は多いので、入居希望者数や倍率、毎年の入居者数についてのデータをマスタープランに記載すべきではないか。都営住宅の新規建設が困難ということであれば、民間住宅を借上げて都営住宅とすることや、家賃補助を行なうことなどの方法もある。最初から家賃補助は行なわないと決めてしまうのではなく、柔軟にどれだけ住宅を供給できるかということを考える必要があるのではないか。

○ 高齢者世帯や子育て世帯の施策と比較すると、青年の単身者など、若い世代への住宅対策が少ないように感じる。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2030年には、単身世帯の割合は37%に増大すると予測されている。また、若い世代の雇用と所得の安定が損なわれ低賃金の不安定雇用も増加している。そうした状況の中で、低家賃で良質な住宅は不足しているので、例えば、このような若い世代の単身者にも、都営住宅の入居資格を付与することや、借上げの公営住宅、家賃補助を実施していくことなどもマスタープランに盛り込むべきである。

○ 都営住宅の応募倍率が30倍や40倍と高い倍率を示しながら、それが改善されないことからしても、都営住宅が不足していることは明らかである。都営住宅の新規建設を再開し、都営住宅を増やすことが必要であり、そのことをマスタープランに盛り込むべきである。

○ 空き家が増加し、同時に生活保護世帯が増加している。都営住宅の戸数は増えていなくても、生活保護世帯の中には、住宅扶助を受けて民間賃貸住宅に入居している世帯がかなりあるので、実際には、公的支援を受けている住宅の数はかなり増えている。全体として、空き家活用を含めて公的支援を受ける住宅が増えているという状況であるのならば、都営住宅については面積が広いので、子育て世帯や母子世帯などに集中的・重点的に供給することとし、障害者や高齢者の方は、都営住宅よりもグループリビングや民間賃貸住宅の空き家を活用していく形にしていった方がよいのではないか。

○ 持家を所有していない賃貸住宅居住者について、生活費の中に住居費がどのくらいの割合を占めているのか調査して、データとしてマスタープランに記載すべきではないか。

(目標10 地震災害からの復興)

○ 復興の局面に関して、地域防災計画を見直すことが記載されているが、住宅の観点から、どういう視点で見直すのかを書き込むことが必要ではないか。

○ どの地域でどういう規模の地震が発生した場合、どこに仮設住宅を建設するのかということを想定しておくことが必要ではないか。

(政策指標)

○ 「現行東京都住宅マスタープランにおける政策指標に関する現況」の資料は、パブリックコメントを行なう際には見えるようにして、これまでのマスタープランの成果がどうであったかを分かるようにした上で、意見を募集すべきである。

○ 現行マスタープラン(2006-2015)で設定している政策指標について、目標以上のペースで進んでいるものもあり、そういう指標については、もう少し踏み込んだ目標値を設定してもよいのではないか。

○ マスタープランは10年間の計画であるが、実際は5年ごとに改定されるので、5年目の中間目標を示しておかないと、そこへの道標がなくなるのではないか。現行マスタープランの政策指標の達成状況を新しいマスタープランに盛り込み、どの指標が目標を達成し、どの指標が未達成であったかということをしっかりと記載しなければ、目標を立てただけで終わりになってしまうのではないか。

○ 政策指標や数値目標が設定されていない項目は重要でない、ということではない。数値目標を設定するためには、住宅政策の目標が数値化できるかどうかということと、数値が統計で把握できるかどうかという2つのハードルがあり、その過程で、数値化できない政策はたくさんある。そのことを、あらためて確認しておく必要がある。

(その他)

○ 住宅マスタープラン(素案)では、様々な施策について細かく記載してあるが、「検討します」という表現がたくさん見受けられる。この先10年間のマスタープランを策定するのであれば、検討するだけでなく、検討した上でどうするのかという都の思いを含めて、踏み込んで記載すべきである。

○ 最近では、首都直下型地震の発生確率の見直しが行なわれて、非常に切迫性の高い問題となっているので、震災対応関連の内容については、重点的かつ早急に取り組むことをマスタープランの中に明確に示すべきではないか。

○ 東京都における人口及び世帯数のピークがそれまでの予測よりも5年後ろにずれており、国全体では既に人口減少局面に入っている中で、東京だけに人口及び世帯が集中していくことが予測されている。このことについて、このまま進んでいいのかどうかという観点で住宅政策も考える必要がある。都内においても、区部と多摩部で差がつき始めるというのが今後の予測である。差がつきそうだという予測があるのであれば、人口を密集させないことは防災上の観点から見ても大切なことであるのだから、区部への過度な集中が起こらないよう、住宅政策においても、もう少し踏み込んだ取組を、このマスタープランに取り入れていくべきだと考える。