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平成23年度 第1回 東京都住宅政策審議会(平成23年4月26日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(住宅の耐震化)

○ 木造密集地域対策を重視しなければならない。首都直下型地震が高い確率で発生すると言われている中で、住宅の倒壊防止と不燃化が緊急に求められる。こういう中で、都の耐震助成対象地域は、木造住宅密集地域の整備地域内に限られているが、住宅の耐震化率90%という目標を達成するためには、助成エリアの拡大や、都の助成額の引き上げを検討すべきである。また、段階的な補強に加え、部分改修や、改修後の総合評価1.0未満の改修に対しても助成できるようにすれば、耐震性能を向上させることになるのではないか。

○ 必ずしも、正確な統計データの裏付けがなくても、耐震化を促進する方法は考えられる。例えば、高層住宅管理業協会が、今回の震災における旧耐震の建物と新耐震の建物の被害割合をある程度出している。こうしたものを活用し、都と管 理業協会やマンション管理センターが協力して、耐震化の必要性や、そのための方策についてマンション居住者に認識してもらう。また、耐震補強や耐震診断の費用については、修繕積立金には一切入っていないということをデータで明確に知ってもらい、だからこういうことをやっていきましょうというように、耐震化に向けた気運を高めて行くことができるのではないか。そのこと自体はお金がかかる話ではないと思うので、早急に行う必要があるのではないか。

○ 都営住宅や公社賃貸住宅は、耐震診断後の建替えか改修かの判断を早急に行い、耐震化を促進することが必要ではないか。

○ マグニチュ-ドの大きな地震が引き起こす長周期振動によって、超高層ビルが大きく揺れ、危険が指摘されている。揺れを抑える制震性能を補強、整備することも必要であり、そのための技術的支援や、財政的支援も検討すべきではないか。

(市街地の整備)

○ 環七周辺の木密地域について、耐震化、不燃化が喫緊の課題と言われて、すでに何十年もたっている。例えば固定資産税をゼロにするなどしてはどうか。現状では、建物の耐震化をすると課税評価が上がり、固定資産税が上がってしまうという仕組みであり、そのことが耐震化や不燃化を阻害している面がある。改築したら上物の固定資産税はとらないなどの仕組みを東京都がモデルケースとして作れば、手本を示せるのではないか。

○ 都市づくりにあわせたマンションの建替えの誘導に関して、検討すべき点は何かといえば、住宅の環境とレベルを上げていく中で、何が必要な力で、何が緊急なのかとういうことを判断するということ。
 今回のような大きな災害は、実は違う形で住宅の質をあげることとまちのレベルを上げることのチャンスになる。
 資料にある「早急に改善する必要があるエリア」とはどこなのか。木造住宅密集地域だけではないだろう。災害上の問題点も含めながら、「良質な住宅ストックと良好な住環境の形成」という視点から、東京都においては、どこが重点地区なのかのビジョンを含めた検討に入るべきタイミングである。
  今後、重点的な取り組みを行うまちづくりについて、具体的に何カ所か決め、そこについては、ある種の支援もするけど場合によっては制限も行うくらいのアナウンスが必要なのではないか。

○ 地方自治体レベルでの住宅予算がどのようになっているかについて、統計の整備が必要である。データを整備することで、不燃化率や耐震化率を、どこでどのくらい上げることができるのかの費用対効果の分析ができ、優先順位がつけられる。予算がどういうところにいくら使われているのかということを、区市町村レベルで整理すべきである。

(津波対策等)

○ 被災地において、津波との関係での市街地のあり方が検討されつつあることに関して、海に面している東京都(島しょ部も含め)においても、復興計画における考え方と類似の考え方をとり、津波に備える必要が出てくると考えられ、そのためのマスタープランの検討が必要ではないか。

○ 今回の震災においては、地震による被害の上に、津波による被害や、更には原発による被害が重なったが、都として、これまで気付いていなかった点、想定が甘かった点など、教訓として今後に活かしていく必要がある。

(エネルギー対策)

○ 今回の震災では、エネルギー問題も重要な問題となっている。節電対策という点でも効果が大きい太陽光発電システム、太陽熱利用システムも取り上げるとともに、住宅の断熱改修工事など、既存住宅の省エネ改修工事を促進するために、必要な費用を助成するなどの誘導策なども検討すべきではないか。

○ 住宅を考えるにあたり、生活政策の観点を全体に通すということが大事だと思う。今回の震災ではエネルギー問題が明らかになっているが、住宅に関係するエネルギーとして、単なるハードの住宅だけでなく、家庭におけるエネルギー削減に向けた努力も重要になってきており、そういう要素をとらえることが大事ではないか。

(災害弱者)

○ 今回の震災では、マンションのエレベータが止まり、高齢者や障害を持った方たちが、自宅に戻れないという状況が生じたが、今後、弱い立場の人たちの災害時における住まいを、どのように確保していくかということも重要な課題ではないか。

○ 住宅政策から生活政策へという考え方が必要だと考えている。その中でも、特に高齢者世帯のリスクが最も大きいことを、震災が起きてみて改めて実感している。高齢者という観点を、横串を刺すような形で、すべての住宅政策における論点の中に絡ませて考えるべきである。

○ 被災者の状況を見ると、高齢者に情報が行き渡りにくい状況となっており、情報格差が生じていると感じられる。若年者であれば支援情報や新しい住宅情報を入手しやすい一方、高齢者は最新情報を入手しにくい。東京において今回のような震災が発生した際に、だれが高齢者に情報を届けられるかと考えたときに、やはり人しかいないのではないか。そうした意味でも、地域のコミュニティがすべてにとって大事であり、NPO等に関る論点だけでなく、全般として地域マネジメント、地域コミュニティをどうしていくかをもう少し深く考えていかなければならないのではないか。

○ 東京で今回のような震災が発生した場合、様々な生活支援サービスが途絶えることにより問題が生じることが考えられる。そうした意味で、緊急時や災害時にも効果的に対応できる生活支援システムはどうあるべきかということを考える必要がある。

(被災住宅の修理)

○ 地震により、屋根瓦が落ちたり、外壁が壊れたり、液状化も起きて家が傾いたりということがあるが、こういう住宅を修理することに対する助成がない。震災を受けて倒れてしまいそうになっている住宅に対する対策も必要ではないか。

(被災者の受け入れ)

○ 地震による被災者の受け入れ施設として、都営住宅などについては、いざというときのストックとして重要であり、特に、ファミリー世帯が入れるような都営住宅をより多く作っていくことが必要だと考える。

○ 被災者数に対して、応急仮設住宅は、用地確保が困難なことなどにより、足りそうにない。全国的には空き家がたくさんあり、東京都にも民間の賃貸住宅の空き家がかなりあるので、被災者を民間賃貸住宅に誘導するような仕組みをつくったほうがよいのではないか。仮設住宅をつくっても、いずれは被災者が自らの住宅をつくることを考えると二重投資となるので、東京都などが民間賃貸住宅に引き受ける仕組みをつくり、しばらくの間、手当てをする方が合理的ではないか。

○ 震災の対応については、長期化することが予想されるが、グランドプリンスホテル赤坂の使用が6月30日までということであり、それ以降の入居者の対応が必要になると考えられる。その際、都内には企業の社宅で空いているところも多く見受けられるので、社宅へのアプローチも検討すべきである。

○ 公共、民間を含め、住宅ストックをうまく活用していくことは重要な論点である。今回の震災のように、何らかの重大な問題が生じた際に、どのようなところで潜在的な可能性があるのか、そうしたスクリーニングがうまくできていれば、今回のような仮設住宅の建設用地確保やインフラ整備における混乱も避けられたのではないかと考えられるので、東京においても、万が一起きたときのリスク対応をどうするかということは考えていかなければならない課題である。

(都営住宅)

○ ハウジングプアの人たちが増えるにつれ、こうした人たちをターゲットにした貧困ビジネスが拡大している。こうした問題を解決するため、都営住宅の新規建設を再開し、募集戸数を増やすことが必要である。また、借り上げ公営住宅制度を活用し、公営住宅の供給量を増やすべきではないか。

○ 都営住宅などで若年ファミリー向けに期限付き入居制度を実施しているが、学校の転校の問題などを考えると、定期使用住宅制度は見直すか、少なくとも再契約を可能にすることを検討すべきではないか。

○ 都営住宅の建替えにおいて、建替え後の住宅は、都市型誘導居住面積水準を満たすべきではないか。

○ 被災者の方への対応と、従来どおりの都民に対する都民福祉の向上、都民サービスの提供を二方面で行っている中で、特に現時点では、積極的に被災者への住宅供給という視点から都営住宅を利用しているが、一方で、依然として住宅供給を求めている都民がいると思うので、そういう方への都営住宅での政策対応について、どのように考えるのか。

(民間賃貸住宅)

○ 都営住宅に入居資格がありながら入居できず、住宅に困窮している都民に、支払っている家賃と公営住宅家賃の差額分を補助する家賃補助制度を創設し、安心して暮らしていけるようにすることが必要ではないか。

○ 民間賃貸住宅等を巡るトラブルが急増し、強引な追い出し被害が起きている。住宅難民をつくらない取り組みの一つとして公的な保証制度をつくることが必要ではないか。

(高齢者世帯への対応)

○ シルバーピアやシルバー交番設置のため、都営住宅や公社住宅、UR住宅の空き室の活用、区市町村への助成の拡充などを通じて、高齢者の見守りの仕組みづくりを急ぐべきではないか。

○ 高齢者の問題の把握について、既に深刻な問題が発生しており、そうした現場の実態もくみ取って、より踏み込んだ議論が必要である。

○ 住宅の需要者側と供給者側がいる中で、供給者側の視点から見ると、特に高齢者向けの住宅供給者には資産家の方が多く、結果的に高齢者の方が高齢者向け住宅の供給者となっていることが意外と多いのかなと感じている。その中で、住宅供給者が、自らの高齢者としての住まいを確保しつつ、その資産を有効活用していく過程において住宅供給も行っていける、そのような住宅供給を行っていくことへのインセンティブについて、供給者からの視点に立った議論も必要だと考える。

(子育て世帯への対応)

○ 誘導居住面積水準について、達成世帯率が下がっているというデータが示されたが、他方、共働き世帯が増え、待機児童が増加するなど保育環境があまりよくないということも含めて、子供たちの生活環境自体を向上させていくということも合わせて見なければいけないのではないか。

(空き家対策)

○ 高齢化の進行に伴って、緊急に手をつけなければならないという危機感を持っていることとして、長期間の入院や相続問題などにより数十年間空き家のまま放置され、倒壊の危険がある老朽化した住宅の問題がある。実際に台風時に倒れたこともあったが、民間の個人的な不動産であり、行政が勝手に壊すこともできない。そうはいっても危険な状態を放置したまま、けが人がでるなどすれば行政の責任問題ともなるので、一歩踏み込んだ対応をしなければならない。実際に相続問題が起きているところに行政が絡むことにより、ある程度信頼関係を築くことができ、建物を壊すところまで進んだ例もある。これまで行政として二の足を踏んでいたところにも、今後は自治体が一歩踏み込んで関わっていかなければならない状況になってきていると感じている。それぞれの自治体が抱えている固有の問題に、積極的にかかわっていけるよう、都として少し後押しをするスキームをつくっていくべきである。

(政策指標)

○ 「都心センター・コア・エリアの住宅建設戸数の指標」に関する「居住地を選択する自由は保障されている中で、都心地域に住宅建設戸数という目標を設定する意義は小さい」というコメントについて、居住地を選択する自由が保障されているために今の都心回帰が起きていると認識している。
 都心部への人口流入を抑えるため、周辺部に住宅を作り、そこに人口を誘導するという政策を、住宅政策として行っていくのかどうかという選択について、戦後、国が行った分散政策は、ある意味で政策の目的を十分に達しないまま終わってしまった中で、何を選んできたのか、それが良いことだったのか悪いことだったのかの議論を行った上で、次の政策を考えていくという検討が必要である。

○ 緑化について、東京都は緑化の推進に重点を置いていると認識していることから、住宅地における緑化率などを政策指標とすべきではないか。

○ 大都市部では特に、今後、高齢化が急速に進むと言われており、住宅政策と他の施策を一体的に考える工夫が不可欠となることから、在宅介護が可能なエリア率など、住宅政策から生活政策への転換に対応できる、生活対応まで考えた政策指標などの検討が必要ではないか。