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平成22年度 第5回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成23年2月8日)における資料

資料

主な意見の概要

(東京都住宅マスタープランにおける政策指標)

○ 全ての政策指標について、なぜ進まないのか、あるいは、なぜうまくいったかという検討、チェックをしなければPDCAにつながっていかないので、今後議論していく必要がある。

○ 都心センター・コア・エリアの住宅建設戸数という指標について、他の地域にも空き地・空き家がたくさんあり、居住地を選択する自由は保障されている中で、なぜ都心地域にわざわざ住宅建設戸数という目標を設定する必要があるか理解できない。

○ 子育て世帯の誘導居住面積水準達成率に関して、平成15年から20年の間で達成率が下がってしまっているが、これは平成15年以降に共働き率が急激に上がったことに関係している可能性がある。共働きをして子供を育てていれば、当然、勤務地に近いところに居住場所を求めるので、住宅の形態としては集合住宅となり、しかも利便性を求めると狭くなる。
 平成27年に誘導居住面積水準達成率を50%とするという目標が設定されているが、家族の形態や働き方が根本的に変わってしまい、日本の住宅がウサギ小屋と言われていた当時に掲げられた目標像と現在の状況が相当違ってきているので、そのような状況を勘案して、政策指標を見直すことも検討する必要があるのではないか。

○ 既存住宅流通シェアに関する政策指標として、住宅・土地統計調査と新設住宅着工統計をベースに計算された数値で示されているが、既存住宅の流通状況を示す数字としては、実際の市場感覚と乖離した感がある。もう少し実態に合う指標を、副次的でもよいので示すべきではないか。

○ 現行の住宅マスタープランを策定した当時は、数値目標を立てることが重視された時期であり、やや無理をしてつくったものも含まれている。数値化が可能なもの、統計データの把握が可能なものという2つの条件をクリアできるものだけしか数値目標にできないため、住宅の専門家から見ると違和感のある数値目標が入っている。それを踏まえて、今後、企画部会として政策指標のあり方について議論していく必要がある。

(住宅の耐震化促進)

○ 施策体系の中では、「公営住宅ストック更新の一層の推進」となっているが、“公営住宅”は機構住宅・公社住宅も含んだ“公共住宅”とすべき。耐震性がある住宅の割合を平成27年までに90%とする目標を掲げているが、一般公社賃貸住宅6万戸のうちの75%、4万5千戸は昭和40年代以前の建物であり、相当なスピードアップを図らなければ目標達成はできない。

○ 耐震化を進めるにあたり、まず耐震診断をして、自分の住宅の耐震性能を認識してもらう必要がある。その上で、様々なアドバイスを受けて、実際に耐震改修を行うという2段階になるので、まず、現状を認識するための取組が必要である。
 重点エリアに関しては、5年以内に耐震診断100%実施くらいの短期目標を設定すべきである。そのように、2段階できめ細かく取り組まなければ、耐震化はほとんど進まないと考えている。耐震診断を重点的に進め、現状認識をしてもらった上で、実際に工事に移っていただくという姿勢を示すことが必要ではないか。

○ リフォームや建替えとともに、既存住宅の売買の機会も耐震診断・耐震化を進めるいいチャンスなので、売買との連携による耐震化の促進についても論点に加えるべき。

○ 耐震基準を100%満足していなくても、耐震性能を向上させると考えられる改修であれば、筋交い1本であっても補助するという、先進的な取組を実施している区もあり、そのような区の取組は評価されるべきである。

(マンション管理の適正化)

○ 「自立的な維持管理が期待できないマンションに対する行政からの働きかけ」について、自立的な維持管理が期待できないマンションとして、属性的に関与が難しい超高層マンション、賃貸化が進んだマンション、入居者の高齢化により管理組合役員のなり手がいないマンションなどを含めて、行政関与のあり方や第三者管理のあり方なども包含して、全体として「管理のあり方の検討」とした方が分かりやすいのではないか。

○ マンション登録制度について、行政にとって分譲マンションの状況を把握するために便利であると同時に、マンション管理組合にとってもメリットがあるということを示すべき。分譲マンションの状況把握だけ行うのではなく、登録すれば、適切な情報提供を受けることができるということも記載した方がよい。

○ 管理会社のリプレイスを促進するかのような誤解を与えないように、「管理組合の自覚を促す体制をつくる」部分と「マンション管理会社の見分け方のポイント整理などを通じ、マンション管理を適正なものにしていく」部分は、2つに分けて表現した方がよい。

○ 「優良なマンション管理会社の見分け方のポイント」は、リプレイスを念頭に置いたものと思われるが、リプレイスを検討する際には、まず、適正な業務が行われているかのチェックから始まるものと考えられるので、「優良なマンション管理組合の見分け方」の前段に「管理業務に対するチェックの方法」を付け加えた方がよい。

(公営住宅ストック更新の一層の推進)

○ 都営住宅や公社住宅の建替えにおいて、特に都営住宅については全体で1,900haの敷地があるので、建替えにより相当な面積の用地を創出できる。これまでも、こうした用地を活用した民間プロジェクトを行ってきているが、特に老朽化したマンションが集中しているような地域で都営住宅団地の建替えを行う場合には、都市づくりと連携した市街地の更新という視点からプログラムしていくなど、施策間の横串の視点があってもよいのではないか。

○ 「公共住宅の建替えによる創出用地の有効活用」について、近未来的な問題としては、余剰地を生み出したとしても、余剰地を活用できる方策が立たないという課題がある。人口減少が目前に迫る中、住宅需要が増え続けるという前提でどんどん建替えを行い、その余剰地を活用していくという文脈では問題がある。

(賃貸市場におけるトラブルの防止等)

○ 「宅建業法等による規制を受けない賃貸住宅管理における居住者の不利益の解消」について、宅建業法には賃貸住宅管理に関する規制が定められていないため、どのような業者でも参入可能であり、実態として悪質な管理が行われている場合もある、ということだと思うが、もう少しわかりやすい表現にした方がよい。

(既存住宅ストック活用の促進)

○ 既存住宅ストック活用の促進に関して、リノベーションを行う場合の一番のボトルネックは、現行の建築基準法関係規定に抵触する既存不適格問題である。

○ 安心・安全な取引を行っていくには、「リモデリング」までは不必要なので、耐震診断、インスペクションの実施や情報公開だけでよいのではないか。

○ インスペクションに関して、「きめの細かい情報提供」という言葉を加えるべき。インスペクションの項目を標準化し、きめの細かい情報を提供することにより、あとどれだけプラスアルファすればいいかということが分かるので、改修を行う場合にも、費用的にも安くなり、時間も短縮できる。今までの蓄積についても評価するような、きめの細かい情報提供を考えるべきではないか。

○ 「品質や性能、履歴等を整備して消費者に対する情報提供が必要ではないか」という中に、マンションの管理状況についての情報提供も加えるべき。

(子育て世代への居住の支援)

○ 子育て支援について、子育て支援施設等の設置促進の必要性をうたっているが、都の認証保育所の設置では、承認が下りるまでに4ヶ月程度の期間が掛かっており、新築物件であれば期間的なゆとりもあるが、既存物件の借り上げの場合には、他に競合する借主もいることもあり、設置承認手続きに長期間が必要な現状では、新たに事業を行おうとする事業者が賃借物件を探すことは極めて困難な状態がある。

(住宅困窮者に対する公共住宅の公平かつ的確な供給)

○ 昨今、貧困世帯が増えている中で、福祉分野などでは家賃補助を行うべきではないかという議論が出されているが、単純な家賃補助政策をいきなり議論するというのは乱暴であると考えている。例えば、生活保護では、住宅扶助という形で、かなりの資金が民間の住宅市場に流れているが、現実には低ベネフィットな居住環境しか確保できていない。また、これとは全く別途に、公営住宅の施策も動いており、トータルでは膨大な金額が住宅に投入されている。
 より効果の高い政策を打ち出せれば、公的な資金をもっと圧縮できる可能性もあるので、そのような総合的な政策を検討すべきである。

○ 既に家賃補助の目的で様々なルートから間接的に公的な資金が大量に流れてきているが、それらがうまく機能していないという状況があるので、直接的な家賃補助政策という議論には、いきなりはならない。

○ 「NPOや企業を活用した住宅困窮者に対する住宅政策のあり方」については、「NPOや民間を活用した」と修正すべき。

○ 空き家を活用した住宅困窮者対策ということを明記したほうがよい。既に空き家を活用した住宅困窮者向けの事業は、民間にもかなりたくさん現れているので、それらを住宅政策上の検討対象に組み入れていけばよいのではないか。

○ 民間住宅を借り上げて公営住宅とする場合と行政が直接供給する場合を比較すると、維持管理を含めれば借り上げの方が何倍も経費がかかるため、財政負担の面から借り上げには踏み切れない事情はよく分かる。しかし、借り上げ以外の方法がないわけではない。空き家の借り上げ以外にも、困窮者を支援するための様々な補助や、権利関係におけるリスクの軽減など、いろいろな方法があると思うので、それらを含めて空き家の活用を検討すべきである。

○ 国からの補助金があるという前提であれば、公営住宅の直接供給の方がよいという結果になると思うが、どういう前提条件を設定して比較しているのかということを明確にして比較しなければ、直接供給の場合と空き家借り上げの場合を比較しても意味がない。

○ 東京や大阪など、いわゆる貧困ビジネスと言われるものが生じているところでは、最終的には生活保護の住宅扶助費がマーケットレントを形成している状況がある。結局、純粋な市場取引において、何平米で築何年のものの家賃はいくらなのかという需給調整が全くついていない。それが今の日本の住宅市場の状況で、極めて混合経済的になっており、様々な形で間接的なお金が入っているということを十分に認識した上で、借り上げや家賃補助ということを議論していかないと、かえって混乱が生じかねない。

○ 生活保護を含めた総合的な検討ということを明確にするため、「生活保護など社会保障制度全体の中における困窮者に対する住宅政策の位置づけを踏まえた議論が必要ではないか」と修正した方がよい。

(その他)

○ 住宅政策における様々な課題が網羅されているが、今後、議論していく中で、政策上の比重が大きいことによる「優先」や、喫緊に取り組み必要があることによる「優先」などを含め、政策の優先順位について検討していく必要がある。

○ 何でも公的資金に頼って取り組む訳にはいかないので、適切な誘導があれば民間主導で動いていけるもの、国と連携して実施すべきもの、都単独で取り組むべきものなど、資金や政策手段による分類についても、今後、検討していく必要がある。