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平成22年度 第3回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成22年11月17日)における資料

資料

主な意見の概要

(消費者の意識・関心)

○ 最近の消費者の知識については、家を買うのに何冊も本を買うなど、非常に特化している方も多いと思うが、一般的には消費者の知識度は高くないし、ホームページを見たり、本を読んだだけでは十分に理解できない。家を買うときの契約の内容などは、全体的に難しく本質が理解できないということだと思う。
マイホーム講習会を開催すると、聴講者の絶対失敗したくないという真剣さが伝わってきて、このような機会が他では少ないのではないか、ということを実感する。適切な情報を的確な方が説明するということが重要である。

○ 消費者が必要とする情報を的確に提供できる体制、ポータルサイトの創設とあるが、民間企業がどんどん進めているので、自治体が関与する必要性は低いのではないか。

○ 情報化が進んでおり、インターネットで住宅に関する情報を探す方も多くなっているが、二極分化していて、使えない方と使える方の差が激しくなっていると思う。
情報を提供するメディア側も徐々にインターネットに移行しているため、インターネットを使うことができない方たちに対しては、行政で何らかの支援が必要ではないか。情報弱者向けだとすれば、対面の相談窓口が適切ではないかと思う。

○ 「マンションみらいネット」はマンションの管理情報をセンターに登録して、インターネットを通じて広く消費者に管理情報を公開するということと、管理組合内部で、修繕履歴情報、設計図書等の図面、管理規約の文書などの情報を共有化することを目的に、情報を電子化して預かるという総合的なシステムである。このような既存の制度をうまく活用して政策展開していくことも大事だと考える。

(インスペクション(住宅検査))

○ 住宅の診断士について確固とした資格がないため、技術的にばらつきがある。本当に信頼性があるものでなければ、消費者は診断料を出さない。
 住宅の診断士の育成や登録制度、あるいは消費者の費用負担を軽減する方策などが必要ではないか。

○ 住宅の診断士についての、新たな資格を公的に設けることは難しい判断になると思うし、公的な資格はなくてもいいのではないかと考えている。

○ 実際にインスペクションを行っている事業者はそれぞれタイプが違う。ある一定の水準やルールを守る事業者を登録していく体制を作ってみてはどうかと考えている。新しい資格をつくるということではなく、既にインスペクションに携わっている事業者が、ある一定の共通ルールを守っていく取組みを進めていけばいいのではないか。

○ 現在の不動産業界では、中古住宅については、築20年を経過したような住宅の査定をするときに土地の価値しか見ない。昔の建売住宅は質的に劣るものが多いため、インスペクションをすればするほど欠点が現れる。このような住宅に検査技士がいいかげんな評価をしてしまうと、かえって消費者を惑わせてしまうことになる。

○ 新築については、保障会社の活用を促進するべきと考える。新築で仕上がった住宅の検査には限界がある。保障会社は性能の検査をして、中間検査もしているので、保証会社がついていることの方が、むしろ消費者は安心するのではないか。

○ 不動産流通業の立場からすると、インスペクションのひとつの課題として、上物としての住宅の価格をどう決めるかということがある。例えば3,000万円の中古の戸建について、鑑定評価上は土地が2,900万円で、建物は100万円だとしても、消費者は3,000万円で建物を買ったイメージを持つので、建物の瑕疵担保についてかなりの指摘をされる傾向がある。ここに、インスペクションが絡んできたときに、現実問題として、どのように消費者に説明するかということが課題としてある。現状として、インスペクションに向く住宅、向かない住宅があり、価値があると思われる住宅についてはインスペクションをして、その状態を正しく見るということだと思う。

○ インスペクションと、保険や瑕疵担保責任の免責、あるいは重要事項説明の責任の範囲などについて調整を行っていく必要があると考えている。

○ 住宅検査を行うプロを養成していく講座をつくっていくことには、実質的に意味がある。都がそのような講座を開く必要はなく、そのようなプログラムに何らかの支援をすることなどが考えられる。

(リフォームの促進)

○ リフォームに関して、消費者が相談する適当なところがないという一方で、リフォーム業者の側も消費者との接点がなくて困っている。いくつかの市区町村では窓口を設置して登録された優良な業者が相談を受け、耐震工事をやっているところもある。そのように、優良な業者団体を登録させて、消費者がその団体に相談するという方向に持っていけばいいのではないか。

○ リフォーム工事を発注したが、契約書もなく、工事金額もわからないまま、現場でやりとりして工事内容がどんどん変わっていくということで、トラブルになっているケースが多くある。リフォームに関する標準請負契約書や各費用の明細と金額をきちんと表示できる標準内訳書の作成を検討できないか。

○ 中小工務店の団体である東京都地域住宅生産者協議会では、リフォームの際の契約書は、原則として「住宅リフォーム推進協議会」の「住宅リフォーム工事標準契約書式」(小規模工事用)を使用するように推奨している。また、この様式をベースに、パソコンで入力ができ、消費者・事業者ともに満足できる使い易い書式のリフォーム契約書を作成中である。

(賃貸住宅市場)

○ 東京の賃貸住宅居住者の意識の外国都市との比較において、住まいや地域への愛着が弱いなどの結果となっているが、外国と日本の賃貸住宅の質や管理システムに差があってこのような結果になっているのか、それとも、賃貸住宅に対する考え方が、違っているためなのか。むしろ、日本においては賃貸住宅に対して終の住み処というより、一定期間の住み処という意識があるため、それが結果に表れるのであり、管理システムや賃貸住宅の質そのものには差がないのではないか。

○ 日本の賃貸住宅の特殊なところは、ワンルームマンションやシングル向け賃貸マンションが存在しているところである。海外の他都市では、住宅として建てられたものを買うか借りるかという選択しかない。日本においては、そもそも賃貸住宅として建てられたものが多く流通しているということが賃貸住宅に対する意識の違いの根本にあるのではないか。

○ 海外都市の賃貸住宅に関しては入居者が詳しい築年数を把握していない。築30年くらいとか、築50年くらいとかいう単位の回答になり、正確に何年と算出できない。

○ 賃貸住宅管理士については、宅地建物取引業協会のプライベートな資格であり、公には認められていない。現在、国交省とも連携し、賃貸管理業協会をつくろうとしているところでもあり、将来的には、国家資格としての賃貸管理士という資格の創設を目指している。

○ 「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」では、不動産業者のうち賃貸住宅の管理をしている業者と、家主のすべてが規制の対象になる。実際に鍵の交換を行ったり、品物を外へ放り出してしまうという件数はごく少数であり、そのようなケースは全て取り締まられていて、裁判でも負けている。
消費者契約法や借地借家法があり、借り手は過保護な状態にあると言え、悪質な借り手が起こすトラブルもあり、一方的に貸し主側や、管理会社が悪いと受け取られかねない表現は避ける必要がある。