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平成22年度 第2回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成22年10月15日)における資料

資料

主な意見の概要

(マンション管理の適正化)

○ マンション管理上の問題の中には、入居前の分譲時の取り決め内容にその原因があるものも多く、入居後に気が付いて管理組合が裁判まで持っていっても勝てないという問題があるので、入居前の段階でそうした問題をクリアして、正しい方向で進めていく必要がある。

○ 区分所有の状態になると民民の問題となり、行政が手を入れにくくなるため、消費者保護政策が徹底されているアメリカのカリフォルニア州では、行政がマンションの管理の内容をチェックして、例えば修繕積立金が低いのではないかということを指摘して、それを行政がパブリックレポートとして公表している。こうしたものを導入していくことも検討してはどうか。

○ マンション購入希望者に管理のことを正しく理解してもらうため、管理説明会を開催することを義務化または奨励していくということを検討してはどうか。

○ 社会問題となっている修繕積立金の不足の問題について、新規では概ね30年、長期優良マンションの場合で50年で設定されているが、このような長期間で均等割りしてもリアリティがないので、設定された金額を提示するほかに、例えば長期修繕計画を均等割りすると25,000円だけど、初期設定は7,000円だから上げていく必要がある、という情報開示をしてから販売するなど、有効な情報開示の方法について検討が必要である。

○ 修繕積立金の情報開示について、販売事業者の反対はあるかもしれないが、きちんと情報開示をして、その上で計画を立てて買って頂くことが必要である。

○ マンション管理上の課題について、管理規約の初期設定等に関わるディベロッパーや建設事業者にもある程度責任があり、区分所有の特徴・特色を販売時に十分に説明すべき、ということについては、賛成だが、製造製品の瑕疵による問題とは異なり、マンションの管理上の諸問題に関するディベロッパー側の責任については、それぞれの対応可能な責任範囲があるので、そうしたことについて客観的に判断すべきではないか。

○ ほとんどの人は、例えば共用部分の形態改変では4分の3、建替えで5分の4の決議が必要ということを知らないし、そもそも建替え、大規模改修ということを意識しないで購入する。ごく当たり前の区分所有法の知識すら説明義務がない。これだけマンションが一般化している中で、重要事項に書いている範囲だけではなく情報開示の範囲を考えていく必要がある。

○ マンション管理の適正化について、管理組合の自覚が必要ということに関して大賛成である。高層住宅管理業協会でも、そうしたことについて検討しているが、例えば国交省告示のマンション管理適正化指針の中の「マンション管理組合が管理業者にその事務の委託をする場合の留意事項」という項目に「適正な管理事務の遂行には、相互協力が必要」という内容を追加することを国に対して要望することについてご検討頂きたい。また、現在改訂作業中である都の「マンション管理ガイドライン」においても、管理組合の自覚ということについて、強調していくことをご検討頂きたい。

○ 分譲マンションの状況把握や登録制度について、進めるべきと考えている。新築の状態から登録して、その後の経緯も定期的に把握するとともに、都・区市のマンション管理の施策や補助制度などの情報を提供するときのツールにも有効に使っていくべき。都民にとっては、一番身近な窓口は区・市であろうから、都でプラットホームをつくり、区・市とうまく連携しながら、管理組合へのきめ細かい情報提供と、情報把握ができるツールをつくれば有効ではないか。

○ 今回、都が行ったマンション管理組合へのアンケート調査について、回収率がわずか10%であったとしても、答えて頂いたところは、それなりに高い意識を持っているところと考えられるので、例えば「マンションみらいネット」について積極的に情報提供するなどしてはどうか。アンケートに答えて頂くと、都の施策をお知らせするなどメリットがあり、しかも、行政として重要な情報が手に入るという仕組みを、検討していく必要がある。

(住宅地のマネジメント活動の支援)

○ 高齢化がどこで起こるかは地域的にピンポイントでわかることである。今後10~15年経つと、1970・80年代に開発された多摩部の駅から遠く離れた地域で猛烈な高齢化が起こり、次いで空き家・空き地や相続の問題が発生する。被相続人は、50~60代で、その人たちは別に家があるため、残された金融資産と、土地・家屋を完全に均分相続しようとするが、不動産の価値がはっきりしないと遺産分割が行われず、そのまま放置されるという状態になる。
 「住宅地のマネジメント」と言っても、実は相続の問題や、郊外部における住宅の実際の不動産価値がわからないという大きな問題を含んでいる。所有関係の権利の問題と利用の問題を切り離して住宅地のマネジメントの問題を組み立てていかないと突破口が開かれない。

○ 住宅地のマネジメントを実行する主体をつくらないといけない。最近はNPO活動がかなり活発になっているので、行政もNPO活動などを支援しながらこの課題に取り組むということが一つの道筋ではないか。また、所有・利用の分離や相続税制は国の問題になるので、東京都から要望を出すということになるのではないか。

(都市づくりにあわせたマンション建替えの促進)

○ 江戸川同潤会のアパートにおける売渡請求の時価に関する最高裁判例は、建替決議をしたときに、非賛成者に対して賛成者側から、売り渡しを請求する制度について、その時価はどうなるのか、という問題であるが、「買い取られるほうは弱者であるから、救済すべき」という意見もあったが、建替えになれば全員が弱者なので、そこに差を設けるべきではなく、建替えが実現したときの市場価値から建替えに要する費用を差し引いたものが時価であるという評価書で、最高裁の判例が確定したというもの。

○ マンション建替えは、地域政策・都市政策として考えていかないと、突破口が開かれない。マンションの改修や建替えの問題は、どこでどのような問題が起きそうかということについて、即地的にわかるし、周辺環境でどのようなことが起きそうかということも、ある程度の実態把握ができる。マンション建替えについて、データベースを作り、即地的、ケース的に解決していく取組みが必要ではないか。

○ 例えば最近、ある地域で、公有地が売りに出され、ディベロッパーがその土地を購入し、マンションが建てられると想定されるが、隣接して築40年200戸くらいの分譲マンションがあり、もしそのマンション管理組合で建替決議ができていれば、隣のディベロッパーと一緒に事業を進め、敷地連担、住宅リロケーションなど、建て替えたいマンション側の選択肢が増えたのであろうが、ある日突然、土地が売れたということを知っても、ディベロッパーはお金の問題もあり、待っても3カ月とか、半年とかいうことになって、マンション管理組合側は右往左往するばかりで全く対応が取れない状況になる。予めわかっていれば動きが取れるのに、全部後追い的になってしまっているので、個別の場所的にデータベースを作っていくことが必要だと考えられる。

○ データベース化は必要だと思う。例えば、措置義務の駐車場について、各マンションごとに無理矢理地下に機械式の駐車場を入れても、空きが出てしまい、その管理費用に問題が生じるなどということが起こっているが、エリアである程度足りているのであれば、全部に駐車場を設ける必要はなく、代わりに、例えば防災的なものにスペースを提供すればいいとか、いろいろなやり方があるのではないか。エリアで解決すればずっとよくなるという話はたくさんある。

○ マンション建替え円滑化法の欠陥の一つは、隣地と一緒にやるときに、隣地を組合で買い取らないといけないため、隣地のディベロッパーと共同事業というのがなかなかできないということ。隣地のディベロッパーと、その建物のディベロッパーがたまたま一致したときにだけ、権利変換の中で何とか工夫してできるということになる。円滑化法にも、隣地の話や借地権型のときの底地の地主との話など、幾つか改善しなければならない点がある。いずれにしろ、マンションの建替えを含めたエリアの再生、大規模修繕を含めた再生に向けた仕組みが必要であり、そのための基礎データは共有化しておく必要があるのではないか。

○ 建替えに携わる事業者からは、仮住まいが大きな問題であると言われている。高齢者は、その地域から離れることが困難なのか、あるいは既存のコミュニティから離れることが困難なのか、それによって、施策として考えることが違うと思う。地域から離れることが困難であるとしたら、地域の不動産業者との新たな連携の中でそこを強化していくことが必要であるし、既存コミュニティと離れることが困難ならば、東京都の中でどこかまとまって建て替えようとしている公的な賃貸住宅をストックしておくなどの施策が必要なのではないか。

○ 仮住まい困難層について、経験から言うと、どちらかと言えば「かかりつけのお医者さんがいてそこでずっと診てもらっているので、ここから離れることは難しい」という方が多い。解決策として、都営住宅の建替えなどで、エリアごとに仮住まい専用の住宅をストックすることはぜひ考えるべき。特に、郊外の大規模な団地ではどうしても必要である。

(住宅における環境負荷の低減)

○ 既存の戸建住宅などのCASBEEに関して、東京都ができることとしては、既存の住宅ストックが、どのくらい環境性能がある住宅ラインナップなのかということを評価することではないか。ハウスドクターなど様々なアイデアが出されているので、そうしたアクションを進めていくことが必要である。