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平成22年度 第1回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成22年7月14日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(東京の人口・世帯の動向に関する意見)

○ 前回審議会における主な意見の概要にある「東京は、人口・世帯がまだ伸びていく時代にあっての住宅供給のあり方を議論して頂きたい」という中身については、厳しく捉えるべきと考える。
 東京の人口が伸びているのは、地方から仕事のチャンスを求め、首都圏に住民票を移しているからであり、世帯数の伸びについても、単独世帯で経済的に脆弱な人が増えているという見方をすると、非常に厳しい状況にあるのではないか。

○ 団塊世代のピークの80万人ぐらいの人たちが、あと2年で65歳になることから、経済成長を支えた核家族の老後の居住の問題についてしっかりやっておかないと、すべてそれが公的負担で、住宅政策というよりも、介護とか施設の負担に回ってくる。そのような意味で、団塊世代が65歳の年金生活になる前に、その人たちが自分たちの今後20年、30年の老後に備えて、自助努力、自己努力をする環境をどうするかということは、住宅政策の大きな課題であり、時間の余裕がないということを指摘したい。
 具体的には、65歳直近の人たちのリフォーム、建替え、住替えということを今すぐに始めないと、大変ではないか。

○ ここ10年で持ち家の空き家化が劇的に増える可能性がある。高度経済成長期に郊外住宅地が開発されていった順番に、空き家化が起きる。即地的にこの現象が見られるので、持ち家の空き家化という視点もしっかりと入れておく必要があるのではないか。

(住宅政策の理念・基本的方向に関する意見)

○ 「高齢者向け賃貸住宅と介護関連施設・診療所等の併設の促進」について、地域の介護インフラを整えるという点では意味があるが、このような事業は、介護保険による収入や医療保険のインセンティブで動いている場合が実態的には多く、その結果、住宅のレベルが低くなり、空間も高齢者の終の住まいとしては不安定なものが現在は多い。こうした点について、住宅側として対応していく必要があるのではないか。

○ NPO法ができて10年が経過したが、実態を動かすためには財源の問題が重要であると思う。アメリカでは1980年代のレーガン政権下で、NPOが市民権を得た。その際、1民間の企業の所得税を控除するか、非営利組織に投資するか、ということをオルタナティブで財源を確保している、2地域再投資法というような法律をつくって、地域で得られた利益について、地域に返るような方法を定めている、3地域目的税的なもので、地域で得られた税は目的税的にNPOに支出する、という財源確保の法律ができた。

○ 公民の役割分担について、民間の活動として、NPOだけに限らず、ほかにも各種の半官半民のような団体がいろいろな活動をしている。例えばマンション管理や耐震に関しても、様々な業界団体があり、個別に活動しているが、全く連携がなく、作業が重複しているところがあるのではないかと感じている。NPO以外にも様々な活動をしている方がいるので、それらの関係を整理して頂きたい。

○ 市場メカニズムを尊重する必要はあるが、問題になっているのは、市場では住宅が提供されない方たちが増えているということが現実にある。例えば、マンションの耐震化について無料相談窓口を開いても、相談が必要な方ほど来ない。むしろ、こちらから出かけていく、あるいは特定の地域に作戦をかける、というくらいの勢いがないと、問題は解決できないところまで来ていると思う。市場メカニズムではうまくいかない方々の問題をもっと積極的にどのように進めていくのかということをしっかり見据えるべきではないか。

○ 市場を補完するということは、スタンスとして非常に重要だと思うが、市場を補完するという理念を掲げておけば、市場が補完できるということではないので、補完するための戦略的な活動を起こすべきと考えている。

(住宅政策をめぐる現状と課題に関する意見)

〔マンション管理の適正化と再生の促進〕

○ 「管理業者の技術力の向上」については、高層住宅管理業協会が、協会に加盟している管理会社の社員に対して、教育研修を行っているほか、任意の資格制度を設けるなどに取り組んでおり、協会に加入しないような業者などが技術力で問題になるのではないか。

○ 「長期修繕計画と修繕積立金の整合性の確保」について、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、均等方式で積立金を出す考え方になっており、その考え方に従うと、当初から積立金額が高くなることについて、現実との乖離をどのようにしていくのかという問題がある。

○ 今後、長期修繕計画の作成や大規模修繕工事の実施などにおいて、専門家による支援が必要になってくると考えられる。資料には「NPOとの連携による管理の支援」とあるが、NPO以外にも様々な関係者、例えば、公益法人、業界団体、専門家、マンション管理士など、幅広い提携・連携先があり、それを総合的に活用しながら支援を図っていくべきである。

○ マンションの役員のなり手不足に関し、第三者管理について検討する旨が記されていることについて、第三者管理で、管理者をいかに組合員である居住者が監視・監督していくかが問題になるので、マンションの管理情報を居住者で共有する方策を、具体的に検討する必要がある。

○ マンションの管理組合は、中長期的な問題については、眼前に迫ったことではないため、様々な施策があるにも関わらず見ようとしない面がある。都や区市町村においてきめ細かなPR、施策の紹介などに取り組んでいく必要がある。

○ マンションの管理業者は、これから非常に産業的な広がりを持つことになると考えられる。築後40年くらい経過したマンションがいくつも出てくるような状況になると、診断、あるいは修繕計画について、管理会社が主要な役割を果たしている場合が多いので、この分野の技術力が非常に重要になってくる。

○ 管理組合が管理業者を選定する際に、市場において管理業者の質が評価され、市場メカニズムが働く形をつくっていく必要がある。通常、分譲当初は管理会社があらかじめ決まっており、選択することはないが、何年か経過して管理会社を改めて選ぶとすると、管理会社の実力をどのように評価したらいいのか、ということは普通知られていない。技術的な産業としての管理業者の拡充と同時に、選ぶ側の選択基準をセットで考えていく必要がある。非常に期待できる産業であり、雇用機会創出という意味からも、希望をもって入れる業界となるように政策的に誘導すべき。

○ 「優良マンション登録表示制度」は、マンションの価値は本来は市場を通じて評価されていくという考え方に立つ素晴らしい制度だが、登録件数が伸び悩んでいるので、「みらいネット」との連携も視野に入れつつ、見直す必要があるのではないか。

○ 管理会社を選ぶときに気をつけるポイントや、大規模修繕のときにどのようなことに配慮して進めていかなければならないかなども、「マンション管理ガイドライン」の中に盛り込むといいのではないか。

○ 東京都の特徴として、超高層マンションが集積している点が挙げられていることに関して、これから先に問題が起こりそうなものとして、超高層マンションのあり方については、長期的な視点の中で検討しておいたほうがいいのではないかと感じる。超高層マンションにおける住替えの問題や高齢化の問題は、非常に特徴的に出てくると考えられるので、検討の仕方や対象の切り方を考えていくべきである。

○ 古いマンションにおいて年金生活者が増えてきており、必要な修繕積立金や管理費を払えない人たちが出てくると考えられるので、いわゆる住宅困窮者ではないものの、そうした人たちをどのように扱うかといった問題があり、例えば年金だけで管理費が賄えるような住宅に移るなどの住替え支援等について、別の項目として検討していくべきと考える。

〔住宅の耐震化〕

○ 新耐震以前の住宅の所有者は65歳を超え、所得がない場合が多い。耐震化だけでは済まない家が多く、リフォームに1,000万単位のお金がかかるため、耐震化が進んでいない。こうした住宅の耐震化を進めるためには、おそらく、家を住替え型にして、改修、借り上げ、賃貸などのファイナンスと、これに加えリバースモーゲージなど、いくつかの組み合わせがないと、耐震診断の補助金を出したところで全然進まない。東京は日本で一番価値が高いエリアの住宅資産があるのだから、それをうまく使って、ファイナンスがうまく回るような形で住替えと組み合わせるような検討が必要ではないか。

○ 昭和40年代以前に建設された都営住宅12万戸、公社一般賃貸住宅4万5,000戸の建替えは順調に行われているのか。住宅の耐震化率を平成27年度までに90%を確保するためには、都営住宅の建替えや耐震改修の実施について、かなりスピードアップを図っていく必要があるのではないか。公社住宅についても耐震化整備プログラムのようなものはあるのか。「住宅の耐震化」に公共住宅についての記述を追加すべきと考える。

〔環境負荷の低減〕

○ 集合住宅の省エネルギー性能が悪いということが言われており、その改善を推し進めるような施策を考えるべきである。住宅のレベルについて、耐震性能に問題がないということが第一であるが、省エネルギー性能や環境負荷削減ということも重要である。環境負荷の削減がなされた良質な住宅の供給やメンテナンスの推進については、ハードルが高いことが予測されるが、対策を考えるべきである。

○ 国の次世代省エネルギー基準である、長期優良住宅の認定をとるために必要な断熱性能などをクリアできるものは、全国の住宅の約1割しかない。特に、小・中規模の賃貸住宅は、オーナーが資金をかけずらいという背景があるため、何らかの取組が必要ではないか。

〔住宅地のマネジメント活動の支援〕

○ 住宅地のマネジメント活動の支援は、郊外の空き家化対策として非常に重要なポイントだと思う。日本に必要なのは、後付けのホームオーナーズアソシエーションだと考えている。自主的なまちづくりをしようにも、きっかけが全くなく、私地と公共地しかないというのが日本の郊外住宅地となっている。一種のパイロット的なプロジェクトになるかもしれないが、例えば、公共用地を逆移管するような形で、運命共同体を無理矢理つくってしまうというようなことをしないと動かないのではないか。

○ 郊外の戸建て住宅地等における問題については、どこか具体の地域をパイロット地区として選び、街並み、空き地・空き家の問題、防災活動などについて、自分たちのまちを自分たちで守っていく、ということをモデルとして示すということも重要ではないか。

〔既存住宅流通・リフォーム市場の活性化〕

○ 既存住宅流通量の把握について、正確を期するのであれば、不動産業者に売買報告を義務づけるような方策を検討すればいい。東日本不動産流通機構に、売買が完了したときに報告する仕組みはあるが、報告義務ではないので、ほとんど届けがされていないのではないか。

○ 既存住宅流通量の推計については、国交省とも協議しているが、きちんとした数字が出てこないというのが現実。一番小さい数字として住生活基本計画における数値があり、一番大きい値で不動産流通経営協会が算出している数字がある。

○ 東日本不動産流通機構への成約事例の報告は、法律で定められているわけではないが、かなり進んできていると思う。ただ諸外国の一部で実施されているような、全て報告されるようなものとは異なり、個人の情報の保護なども絡み、簡単にはいかないところもあるため、将来的には登記の件数からきちんと流通量を追えるシステムをつくっていきたいと考えている。

○ 「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」について、「リフォーム工事後の瑕疵や不具合に対する対応」、「消費者トラブルの防止策」という、どちらかというとネガティブなものに対しての防止策が列挙されているため、リフォーム市場が活性化される感じを受けない。消費者が住宅リフォームをしない一番の理由は面倒であるということ、現金で支払わなければならないなどのお金の面、工事をお願いするところがわからないことなどの理由があり、情報提供をもっと推進していくなど、既存住宅流通・リフォームの推進にかかわるような項目にすべき。

○ プレ高齢者の持家の改修が特に重要だと思う。省エネルギーや環境負荷削減は大事であっても、そのためにリフォームする人は非常に少ないということがわかっており、「健康リフォーム」などのキーワードと連動して、プレ高齢者の持家リフォームを促進するなど、そのような新しい記述があってもいいのではないか。

〔住み替え支援等による持家ストックの活用〕

○ 「良質な住宅ストックと良好な住宅環境の形成」に分類されると思うが、50歳代から65歳までにターゲットを絞って、自らの住環境、住宅の改善に対する自助努力、自己投資を緊急的に支援するなど実効性のあることをやるべき。このような方たちは、既に持家に入っている方が多いので、その方たちに対するリフォーム、建替え、住み替えということについて、本当に積極的に働きかける必要がある。

〔賃貸住宅におけるトラブルの防止〕

○ 高齢者向けの住宅供給がなかなか伸びないことの原因として、トラブル時の後処理の問題があり、家主に負担がかかるケースが多い。入居者が死亡された場合、自治体によっては、片づけに関して行政がある程度負担するということをしており、そのような方策を広めていく必要がある。また、バリアフリー化などを貸主側が行うのであれば、ある程度の補助がないと負担しきれないという側面がある。

○ 生活保護受給者について、賃貸住宅の入居に関するトラブルが発生した場合、不動産業者が間に入って対応せざるを得ないことがあるが、行政側は生活保護受給者をある程度保護をしなければならないということがあるので、不動産業者のやり方とそぐわないことがある。 これだけ賃貸住宅のストックがあるので、借り上げ住宅を増やすような方策を行えば、貸主も安心して貸せるし、高齢者に対する供給量も増えてくるのではないか。

○ 東京都においては、民間の賃貸住宅をどのように適正に管理していくかというのは大きな課題。適正に管理されていないことによって、ごみ、駐輪場、駐車場問題などについて、地域が迷惑をこうむる。これらの問題に関しては、建築時にはある程度規制が可能であるが、維持管理開始後はほとんどノーチェックの状態。管理人室が倉庫になっている例があるなど、その後の実態把握ができず、地域との問題も多く発生しているということがあるので、検討が必要である。

○ 若年労働者と言われる若い人の失業者や低所得者が増大している。この問題にリンクしていると思うが賃料滞納者が非常に増大している。「家賃賃料滞納者の取立業法」と言われる法律について、家主の民間経営者は不安になっている。夜の8時過ぎ・9時過ぎに賃料滞納者に督促してはいけない、などのことが、ほとんど審議されない状況で参議院を通過してしまった。賃料滞納者に対して裁判をした場合、非常に時間と経費がかかる。また、東京は特に外国人居住者が多く、それに対するトラブルも非常に増えている。さらに入居者の自殺が増えている。このようなことから、空室の増大や賃料の下落など、経営に対する民間賃貸アパート経営者の不安が問題になっており、行政としても取組が必要ではないか。

〔高齢者向けの住まいの確保〕

○ 「高齢者向けの住まいの確保」に関して、高齢単身の借家住まいの方への対応については、住宅手当の支給よりも、むしろ借り上げ型による対応の方が当面はいいのではないかと考えている。ただ、その場合、どの値段で借り上げるかという賃貸料の需給調整が非常に大きな問題なので、そこまで踏み込んだ議論をする必要があるのではないか。また、65歳の借家の単独世帯の方のうち15%が要介護認定を受ける可能性があり、膨大な施設需要があると言われていることも大きな問題。都は90年代、シルバーピアに積極的に取り組んできた実績があり、シルバーピアを介護をするための住まいの場に位置づけるということを検討すべき。

〔項目間にまたがるものなど〕

○ 資料5では、住宅政策の3つの柱ごとに項目立てしているが、これらの個別の項目にまたがってできるものもあると思う。例えば、空き家を公共が借り上げる仕組みや公的住宅ストックの更新については、新しくつくるという発想ではなく、既にあるストックや空き家等の活用であり、そのようなことにより、ミスマッチのかなりの部分が解消できると考えられる。これらの項目を複合的に合わせることによって問題は解決できるという視点を加えて欲しい。

○ NPOの財源問題、関連団体との連携の方策、ストックの活用など、共通するテーマとなるものがあるので、それらは別項目を立てて、目立つようにした方がいいのではないか。