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平成22年度 第1回 東京都住宅政策審議会(平成22年6月22日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(人口世帯動向と空き家などストックの活用)

○ 来年度からスタートする住宅マスタープランを考えたときに、22年から27年まで、18万世帯の増加がある。もう少し遠い将来を見たときには本格的な人口減少、世帯減少時代があるが、当面10年ぐらいの世帯増に対しどういう形で住宅の施策があり得るのか、中長期的に見たときの人口減少時代とどう対応していくか、といった課題がある。
 民間市場を中心に住宅供給がなされるというのは変わらないが、セーフティネットなど住宅に困窮する人に対して、どのような支援の仕方があり得るかというのは重要な論点。近未来的には、都の場合は人口減少時代は到来していないということを認識して、少し緩やかに人口・世帯がまだ伸びていく時代における住宅供給のあり方も議論して頂きたい。

○ 耐震性などの面で問題のない空き家がどのくらいあるのか、そのまま有効活用できるものがどの程度あるのか、なぜ空き家になってしまっているのか、そういった理由を整理することによって、もう少し具体的な提案ができるのではないか。住宅一次取得層で、まだ住宅を取得していない層に対して空き家を貸して提供していくことについては、今後、都の場合は人口が増えていくが、就労可能な、働いている世代が増えていくのか、どういった年代の方々がどのように推移していくのかによっても検討の仕方が違ってくるのではないか。

○ 空き家が多い一方、住宅需要とのミスマッチが起こっている中で、持ち家の賃貸化がかなり重要な課題で、自分の住宅を提供して、自分は少し安いところに住む、あるいは2軒あって、そのうちの1軒を貸すということがある。NPOの活用という意見もあったが、東京の住宅問題の深刻さを考えると、それだけでなく、公的なプラットホームのようなものの検討も必要ではないか。

○ 空き家を活用することによって、そこにコミュニティが生まれて、他の地域とのつながりができていくなど、二次的、三次的な効果も踏まえて施策に取り組んでいくことが重要。また、外国人の留学生の住居についても、優秀な留学生は、10年後、20年後に自国で政府の高官などその国の重要な役職についている場合が多いので、補助をする、税金を投入するというのであれば、そのようなことも考えて、先を見据えて空いている部屋の活用を考える必要がある。

(マンション管理の適正化)

○ マンション管理組合を財政困難に陥らないようにするためにも第三者管理者制度は必要で、第三者管理者と財政困難化というのは裏腹の関係にある。
 最近、年金生活者の管理費滞納に関する相談事例が増えてきている。マンションが古くなるほど、修繕費などは上がっていくので、払えなくなるのが目に見えている。そのような人たちに対して、粛々と管理費の請求をして対処をするということも必要だが、年金生活者に対して、受け入れ先のようなものをどうするかということも考える必要があるのではないか。

○ マンション管理を適正なものにするためには、マンションの管理会社の技術力あるいは対応能力を高くしていく必要がある。管理組合が管理会社を選ぶときに、十分に比較せずに決めているケースも多く、比較しようと思っても、何を比較していいかわからない。これからは、マンション管理会社がより一層大きな役割を果たしていくので、その健全な育成や適正に選ぶためのガイドの作成なども検討する必要がある。

(マンション建替えの円滑化)

○ 資料にマンションの賃貸化がされると借地借家法が適用されるとあるが、借家人が一人でもいれば借地借家法が適用されるので、マンションの賃貸化が進んだからといって借家人を簡単に退去させることができなくなるという、集合的な問題ではない。
 他方では、マンションを空き家にしておくよりも賃貸して利用する方が、空き家の活用・住宅ストックの活用という点から、借家人がマンションにいるということは、必ずし負の側面だけではない。一概に借家人がいることとスラム化することとは結びつかない。

○ 資料のマンションの建替えに関連して、「建替えを決議したにもかかわらず、1軒借家があったとき、そこに借地借家法が適用されて建替え決議が正当事由として認めらず、それによって長引いてしまってスラム化する」ということを危惧されていたという趣旨を明確にすべき。また、「日本の場合は建替えは5分の4だけれども、解消は全員合意なので、特別多数決というような道も開けていくほうがいいのではないか、またこれは国で検討すべき課題」という意見だったと記憶している。

○ マンション建替えの円滑化に関連して、資料ではアメリカの法律ではターミネイト(解消)することで賃貸化による建替え困難化の問題を解決しているとあるが、区分所有者の80%の賛成が得られれば区分所有を解消できるという制度であり、賃貸人の退去あるいはスラム化と直接結びつく制度ではない。この制度は、災害とか地震に関連して若干事例がある程度なので、慎重に考える必要がある。

○ マンション建替えに関して、戸数が少ない場合、円滑化法の手続きでは時間がかかるため、円滑化法を使わないで進める場合もあると聞いた。小規模なマンションの建替えも今後増えてくるということを鑑みると、どのような支援策があるのかということを別に考える必要がある。

○ マンション建替えについて、仮住居は大きな問題だと聞いている。例えば郊外の大規模なマンションで建替えが起こったときに、公営住宅や公団の賃貸住宅が難しいとなると、民間の方々との連携をしていく必要がある。支援ツールとして、何か誘導などをできるような形で考えていく必要がある。

(耐震化・環境への配慮)

○ 耐震化率を早急に向上させる必要があり、都も2015年度末で90%という目標を掲げている。都では木造住宅密集地域に限定して木造の耐震改修助成を実施しているが、実績が十分でないのではないか。区市町村へのアンケートでは、対象地域を拡大してほしいという自治体が非常に多い。また、都の住宅リフォームガイドでは、リフォーム工事と合わせて、耐震改修などの機能を高める工事をすれば、費用の面だけでなくて、工事施工の点からも効率的とあり、いくつかの改修工事を有機的につなげうまく機能できるようにしていくことが必要ではないか。

○ 地球環境の問題が叫ばれるようになっており、国では例外なくすべての住宅・建築物を対象に一定の省エネ措置の義務づけについての議論がスタートしている。住宅版エコポイント制度など、注目されている制度もスタートしており、都としても、今後にどのようなことができるのかということを議論する必要がある。

(賃貸住宅市場)

○ 賃貸住宅について、都心部でも空き室が出ており、事業者は大変苦労している現状。耐震診断・耐震補強を実施したかどうかで、借主の選択肢に影響がある。省エネやインスペクション、バリアフリーなど何をやるにもコストがかかり、零細な賃貸事業者はやろうと思ってもなかなかできない。都や区で補助ができないか。

○ 賃貸住宅をめぐる規制は近年厳しくなっており、また、経済情勢の影響もあり、空室率も高くなっているので、個人事業者のオーナーの二世が市場から撤退していくということが起きている。
 古い空室をリフォームする資金がなかったり、マンション全体をよい管理状態に保っていく資金がないため、管理状態が悪いものが多くなっている。そのような住宅には、どんなに家賃が低くても、入居者がいない。民間のオーナーが資金を投入して、賃貸住宅の質の向上を行っていく経済状況にないので、オーナーである個人への援助も、行政で考えていく必要があるのではないか。

(住宅困窮者・高齢者への対応)

○ 年末年始に起きた派遣村のような状況では、仕事を失うと住居も失ってしまうということで、不況のときに住む家がなくなるという住宅政策しか存在しなかったということではないか。
 現行マスタープランの「住宅に困窮する都民の居住の安定の確保」は非常に重要。その中で、安心して暮らせる環境をつくる上でも、公共住宅が必要。倍率が高く、都営住宅になかなか入れない状況の中で都営住宅の新規建設の再開や建て替え時に戸数を増やすことが必要ではないか。
 高齢者や障害者などについてポイント方式、優遇抽選制度があるが、単身者は含まれていない。60歳以上の単身者は、一般の賃貸住宅に入居するのが難しくなっているので、優遇抽選制度を単身者に広げていく必要があるのではないか。

○ 住宅に困っている人に対するセーフティネット機能強化の対処方法として、公共住宅を増やすということの他に、NPOが空き家を活用して、住まいに困っている人に対処するという方法があり、その領域が拡大しつつある。それを伸ばしていくことによって、数が不足していることに対処できるのではないか。今回、特にNPOや民間のストックを使っていく、ということを打ち出すといままでとかなり違う住宅政策が組めるのではないか。

○ 空き家が約75万戸もある一方で、住宅を確保できないでいる人がいる。家賃を補助する制度があれば、普通の家賃で民間の賃貸住宅に入れるのではないか。以前の調査から住宅数は世帯数を1割上回っている状態が続いており、家賃補助についても考える必要がある。また、借り上げ公営住宅制度を利用して、都市再生機構の住宅や、民間のマンションも借り上げて公営住宅として、供給量に加えるということも考えられるのではないか。

○ 地方分権で公営住宅法の改正により、都道府県に整備基準や入居資格等について権限を委譲することになる。東京の人口はこれからピークを迎えるということから東京都の特性というものがあると思われる。地方だと、委譲されたけれども、どのように活用するか見えてこないところもあると思われるので、都が具体的なモデルをつくって頂きたい。

○ 東京都防災・建築まちづくりセンターが実施している「あんしん入居制度」は、預かり金などハードルが高いということもあり、活用が伸び悩んでいるように思える。制度の周知を進めることや、仕組みを使いやすくすることが必要ではないか。

(地域特性)

○ 東京と言ってもとても広く、都心部、木造住宅密集地域、多摩ニュータウンなどいろいろなバリエーションがある。バリエーションの中で地区特性を含んだ形で考えないと、一般論的という印象が拭えない。ぜひ即地的な部分を考慮しながら、住宅政策をどう考えるかという視点を入れて頂きたい。

○ 東京全体の議論と基礎的自治体レベルの議論をうまく組み合わせて議論する必要がある。自治体によっては、都営住宅の全世帯数に占める割合が高いため、生活保護その他福祉行政と関連して基礎的自治体に関わる負担が非常に多く、今以上に公営住宅等を受け入れるというのは財政的にも厳しい場合もあり、その偏在性なども議論して頂きたい。どのようにして都全体でバランスよく住宅困窮者を受け入れていくのか、基礎的自治体にもそれぞれの違いがあるので、きめ細かな議論展開をして頂きたい。

○ 多摩地域の既成住宅地で、特に戸建住宅地のリニューアルを促進するにあたり、二世帯・三世帯住宅にしていくため、容積を上げていくことが重要ではないか。多摩地区の場合、最低の面積要件が23区と差異があるので、今後、多摩地区と23区の格差を解消して頂き、多世代が住み続けられる建て替えを促進していくことが必要ではないか。

(その他)

○ 前回マスタープランの施策を実施してきたという中間の到達点を示す必要がある。審議するのなら、今までの施策の効果はどうであったのか、この方向でよかったのかということも一つの基準になるのはないか。できるだけ早く示して頂きたい。

○ 都営住宅・公社住宅は今後、建替えが進んでいく。創出される用地をどう活用するかというのが大きなテーマになるので、トータルプランを検討して頂きたい。