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平成21年度 第2回 東京都住宅政策審議会企画部会(平成22年3月26日)における資料及び主な意見の概要

資料

主な意見の概要

(英国の住宅長寿命化の要因)

○ 英国では自治体が快適な住宅の提供等を歴史的に行っている。住宅の程度を評価するツールがあり、自治体の専門家が評価し、程度により家主に改修の義務が生じるなどの話を聞いた。自治体の住宅政策に対する視点は日本と英国あるいは東京とロンドンとではどう違うか。

○ 英国では自治体より、むしろ、市民による財団が大きな強制力を持っていて、入居者や所有者に対し、住み方などの様々な規制に関して契約書を結ばせ、契約を守らない借り手に対しては、裁判に持ち込むこともできると伺った。自治体は、市民団体に力を付与し、市民の活動の後押しをするというような形だと聞いている。

○ レッチワースガーデンシティでは開発を行った会社が、まちの価値を維持していくため、入居者に契約という形で理解を促しており、そのような価値を評価する人たちが集まって暮らしている。新しいものを好む市民もいる中で、どのような共通認識のもと、住宅の長寿命化をスムーズにしていくためどのような政策が必要なのか、という議論が必要。

○ 英国では、既存住宅の流通において、買い手がビルディングサーベイヤー(建物調査士)を雇用して性能をチェックする従来のやり方から、売り手が情報を開示する「ホーム・インフォーメーション・パック」へと売買の方向が大きく転換している。売り手が情報を開示する仕組みは、日本にもうまく導入していけたらいいと考えている。

○ 英国における既存住宅のサーベイ(建物検査)は、信頼度が非常に低く、買い手もないよりあったほうが安心というぐらいの気持ちのようだ。ただ、古いものには価値があり、その心配を超えてまで買いたい魅力があると考えているようだ。

(既存住宅市場)

○ 住宅履歴情報「いえかるて」では、共通のフォーマットをつくり、また、専門の情報サービス機関が、履歴情報を統一的に管理する仕組みをつくったが、消費者からは、公的な機関が扱ってほしいという意見がある。今後、住宅履歴情報を正確に蓄積していくために、東京都など自治体レベルがどのようなことをサポートしていけるか、検討が必要である。

○ 既存住宅の流通制度においては、今後、インスペクションが大事だと考えているが、、消費者からは誰に依頼したらいいのかわからないという質問が多い。国家資格はなく欧米でも同様の状況。今後、インスペクションを普及していくためには、業者選定のポイントの提案や、講習受講者の認定や登録の仕組みなどがないと、普及にはつながっていかない。都のレベルで前向きな検討が必要。

○ 戸建の場合、数千万円もの投資をしたものが、ほぼ一律20年~25年でゼロ評価という仕組みは大きな問題である。戸建については特に既存住宅に関して適切に評価がなされ、適切な価額で流通する仕組みにしていかないと、新築住宅市場も住宅リフォーム市場もきちんとしたものにならないと考えている。また、既存住宅を考える時に戸建とマンションを区別して議論することが必要。

○ 既存住宅の市場及び評価について、都が間接的に支援することは可能ではないか。例えば民間の非営利組織であれば、かなりはっきりとした評価を下すこともできるであろうから、これを支援するというような方法を考えて、実効性のある施策が実現できればよいのではないか。

○ マンションに関しては、管理とか管理組合の活動をいかに長持ちさせていくかというようなところが重要。管理がいいものは築40年たっても築5年以内ものとほぼ同じぐらいの坪単価で取り引きされている。現状ではそのようなものは極めて少ないが、そのようないい管理のものを広く広めるようなことをやっていく必要がある。

○ 既存住宅取引の割合に関する政策指標の現状9%の根拠は住調に基づくデータであるが、住調のデータは現に調査時点で住んでいる方が過去に住み替えをしたかどうかを表している数値であり、実際上のマーケットで既存住宅が取引されている量というのは、この量をはるかに上回るというのが実態である。既存住宅取引の量という意味で、住調の数字を鵜呑みにするのは疑問がある。

(賃貸住宅市場)

○ 賃貸住宅の管理に関して、原状回復に対するトラブルは、東京ルールにより相対的にかなり減ってきたと聞いているが、更に諸外国でやっているような敷金・預かり金制度などを議論していく必要があるか検討が必要。また、契約内容に関するトラブルについては、契約の時点での相談をきちんとすることにより、問題を予防していける可能性があるのではないか。敷金の問題や契約の中身の問題について、具体的に施策を考えていくための情報が必要。

(環境への配慮、良好な住環境の形成など)

○ 環境負荷削減というのは国の大きなテーマでもあり、今後ライフサイクルの環境負荷削減が重要になる。今年の夏に向けて住宅についてもCASBEEという評価ツールを改訂してライフサイクルCO2を評価しようという動きがあり、都も先進的にそれらを政策に組み入れていくことを検討する必要がある。

○ 成熟した都市にふさわしい豊かな住生活の実現という観点について、今後は、ソフトの観点も視野に入れたほうがいいのではないか。マンション、戸建を含めた地域コミュニティの形成や、安心・安全を確保する行政と住民との連携など、人と人とのつながりというソフトの面に言及した施策を今後は打ち出していくことも必要ではないか。

○ 住宅マスタープランの目標3「街並み・住環境を備えた住宅市街地の形成」について、自治体として都はぜひやっていく必要があると考える。住宅は、一戸単位ではいいと思っても、周りの住環境が悪くなれば、そこに住んでいる方は引っ越さざるを得なくなる。街区レベルでの管理を後押しするような施策が必要である。

(住宅困窮者への対応、福祉政策等との連携)

○ 住宅困窮者等が今後もある程度増えていくと考えられる中で、現実に木賃住宅ストックが減り、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に建て替えられると、住宅に関してコストアップしていくことが考えられるが、こうしたことを福祉政策の中でどのように考えているのか。

○ 手元のデータでは生活保護世帯は、一般の入居者よりも賃貸のあっせんをした場合、事故率が高い。建物について、区や都が一括借り上げなどを行えば、もう少し住宅を提供する賃貸住宅オーナーも増えるのではないか。

○ 生活保護政策と住宅政策の連携については、次期住宅マスタープランを検討する際の重要なテーマになる。

(政策全般、政策指標など)

○ 資料3-1では、新築、既存、リフォーム、賃貸と、住宅市場を4つに分類して整理しているが、住宅を段階的に考えると、新築の住宅もいずれ既存住宅となり、そしてリフォームもなされ、途中から賃貸化されるものもある。新築の段階で想定される様々な課題は、実は既存住宅やリフォーム市場につなげていくための課題でもある。そのような、何かつなぎが必要ではないかと感じる。

○ マスタープランでは、目標値を2015年とした政策指標が多いが、中古住宅流通シェアなどかなり挑戦的な目標を掲げているものも含まれている。目標を達成するために何をするのかというアプローチと、現状ある課題を少しでもよくしようという形でのアプローチとでは、かなり違うので、どちらのアプローチを強く出すかという点について、検討が必要ではないか。

○ 2015年という短期的な目標と、2020年や2025年という中期的施策の両方を見極めながら進めていくことが必要である。現行マスタープランの目標は、これまで抱えてきた課題に対する短期的な目標を中心に掲げているが、今後は新たに少し先を見た課題についても位置づけていくとしたらどうかという視点も必要になると考えている。

○ 住宅市場の問題について、どこまで都が公的主体として関与するのか。情報提供や消費者に対する啓蒙啓発などは、直接政策手段と呼べるかどうか。例えば、中古住宅流通シェアを政策指標としているが、都が責任を持てる目標ではなく、市場に対する見通し・予測を言っているのであり、都が直接供給するものに対する政策指標とは位置づけが違うと考えられるので、表現の手法を工夫する必要がある。

企画部会終了後に提出された意見
 (マンションの管理)

 資料3-1の「住宅リフォーム市場」における想定される課題例「マンションの的確な維持管理、修繕、改修等の促進」について、マンション居住者のうち高齢者がかなりの比重を占めており、今後更に増えていくことを考えると、管理組合役員のなり手不足と、管理組合の財政困難化という二つの大きな問題が生じてくると考えられる。
 前者については第三者管理者方式の検討が必要と考えられるし、後者についてはより深刻な問題だと考えられる。住宅の長寿命化に関して、マンションに高齢居住者が増えれば、長寿命化そのものが難しい、ということにもなり、この点について、何らかの対策が必要と考えている。